メルセデスはやはりメルセデスであった、という話【新米編集長コラム#32】

公開 : 2025.06.01 11:45

野球のユニフォームのような縦ピンストライプ

一方、気になったのは、これはメルセデス全般の話だが、シフトがステアリング右側で上下に動かすレバーであることだ。実は今回の走行中も一度、ウインカーと間違えてニュートラルに入れてしまったことがあった。位置はここでもいいが、フォルクスワーゲンヒョンデのように、前後に捻る形のほうが個人的には使いやすいと思う。

また、あくまで好みの話ながら、野球のユニフォームのような縦ピンストライプが入ったインパネデザインが、実直さを感じさせるクルマのキャラクターに合ってない気がした。あと、ブレーキを奥まで踏み込んで作動するオートホールドのロジックが最後まで理解できず、踏んだのにホールドしない? という場面が何回かあった。

縦ピンストライプが入ったインパネデザインに個人的には馴染めなかった。
縦ピンストライプが入ったインパネデザインに個人的には馴染めなかった。    平井大介

しかし、気になる部分はあくまで個人的な感覚によるもので、アクセルペダルのように、その多くはメルセデスの哲学に基づいている気がしてならない。

特にGLCは『SUVのCクラス』となるべく、気合いを入れて開発しているようにも感じている。初代GLCを取材した際も、製品としての緻密さや完成度の高さから、クルマから緊張感が伝わってきたのが印象的だった。さらに書けば、これは同日取材したひと回り大きいGLEからは伝わってこなかったことだ。その時、「これからはCクラスではなくGLCがメルセデスの中心になる」と直感したのである。

冒頭で書いたようにこの感覚は正解だったようで、別日に試乗会で触れた220dコアも含めて、GLCは購入して間違いない1台だと思っている。

しかも350eはWLTCモードで126kmのEV走行が可能で、今回の試乗でも100km以上は軽く走ってくれる印象だった。自宅に充電環境があれば、年間の給油回数はかなり少なくなりそうだ。この内容で価格1013万円は(数字だけ見ればもちろん安くはないが)、リーズナブルとさえ思うのである。

世の中的には少数派となってきたパッケージ

そして、GLCと入れ替えで『E300エクスクルーシブ』にも数日間試乗することができた。300を名乗るが、2L直4にISGを組み合わせたモデルである。ISGはエンジンとトランスミッションの間にあるモーターのことで、現在メルセデスの多くのモデルに搭載されている。

E300の美点はGLCで感じたものと基本的には同じであったが、『後輪駆動のガソリンエンジンを搭載したセダン』という、世の中的には少数派となってきたパッケージに心地よさを覚えた。全長4960mm、全幅1880mmはもはやSクラスと呼べそうな大きさではあるものの、視線の低さは逆に落ち着く部分もあり、乗っているとW124から始まる流れの先にちゃんと位置していると感じてくる。

E300の『後輪駆動のガソリンエンジンを搭載したセダン』というパッケージに心地よさ。
E300の『後輪駆動のガソリンエンジンを搭載したセダン』というパッケージに心地よさ。    平井大介

GLCにしてもE300にしても、一度これらの『哲学』に慣れてしまうと、他には戻れないのではないかという感覚があった。20歳代の頃、乗って感心したことを先輩に話すと、「メルセデスはあがりのクルマだからね。この仕事を続けるなら、まだ買わないほうがいいよ」と言われたことがあり、それを思い出したのである。

あれから四半世紀ほどが過ぎた今、周囲を見渡すと、Cクラスのワゴンあたりを仕事のアシとして使用し、一方で趣味のクルマを所有する姿がいくつも具体例として浮かぶ。まだ『あがる』には早いが、そろそろ『ありかも、メルセデス』と思った52歳の初夏であった。

車両協力:メルセデス・ベンツ日本

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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