すべてがヴェイロンを凌駕 ブガッティ・シロン(1) 恐るべき1500psで420km/hのハード

公開 : 2025.06.03 19:05

あらゆる面でヴェイロンを上回ることが掲げられたシロン 8.0L W16の4ターボ 最大トルク162.8kg-m 0-300km/h加速13.6秒 ゴルフのように運転できるハイパーカー UK編集部が試乗

あらゆる面で、ヴェイロンを上回ること

ブガッティ・シロンの設計方針は明瞭だ。あらゆる面で、ヴェイロンを上回ること。

ただし、当初発表されたシロンの最高出力と最高速度は、1500psで420km/h。1200psのヴェイロン・スーパースポーツが残した、430km/hには届いていなかった。だが実際は、リミッターで抑制されたものだった。

ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)
ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)

この小さな誤解を解くため、ブガッティは1600psで30台限定のシロン・スーパースポーツ300+を投入。フォルクスワーゲン・グループが保有するドイツのエーラレッシエン・テストコースで、490.4km/hという驚愕の記録を残している。

最高速度は、シロンにとって重要といえる。記録破りの数字によって定義される、歴史へ刻まれるべきクルマだと表現できるから。今回はオリジナルのシロンと、300+より快適性重視のシロン・スーパースポーツの2台で、その偉業を振り返ってみたい。

8.0L W16の4ターボ 最大トルク162.8kg-m

シロンは、カーボンファイバー製タブシャシーを備えた、ミドシップ・ハイパーカー。リアのサブフレームやエンジンのキャリアフレームもカーボン製で、タブシャシーとキャリアフレームは、10本のチタン製ボルトで締結される。

エンジンは、フランスのモルスハイム工場で組み立てられる8.0L W型16気筒。4本つづV型に並ぶシリンダーは上側が90度、下側が15度というバンク角を持つ。トランスミッションは、リカルド社による7速デュアルクラッチ・オートマティックだ。

ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)
ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)

ターボは4基あるが、2基は常時回転し、ターボラグを最小限に留めている。残りの2基にはバルブが備わり、アクセルペダルの角度やエンジンの回転数に応じて動作。その場合、シリンダー4本毎に各ターボへ排気ガスが送られる。

最大トルクは162.8kg-mで、2000rpmから6000rpmまでほぼフラットに生成される。スーパースポーツでは、2200rpmから7000rpmと、僅かに発生回転域が広い。

ハニカムコア構造を持つ複合素材のボディ

パワーは主にリアアクスルへ伝達され、許容しきれない場合にハルデックスカップリングが制御され、フロントアクスルにも分配される。フォルクスワーゲン・グループの量産車として世界中の環境へ対応するよう、冷却システムも巨大だ。

ターボはヴェイロンより5割ほど大きく、吸気マニホールドはカーボン製。カーボンセラミック・ブレーキディスクの直径は420mm。3軸方向で異なる素材を配合したサスペンション・ブッシュ、NACAダクト付きのアンダーボディなど、特筆すべき部分は多い。

ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)
ブガッティ・シロン(2016〜2024年/欧州仕様)

アルミホイールは前が20インチで、後ろが21インチ。タイヤの幅は前が285mm、後ろが355mmある。超高速域での安定性を求めて、全長はスーパースポーツが250mm長い。テールパイプは縦に重ねられ、巨大なディフューザーを得ている。

ボディは、ハニカムコア構造を持つ複合素材。ヴェイロンより肉薄で、洗練されたスタイリングに魅了される。カーボンの織り目は極めて緻密で、お好みで素地が露出した状態でも納車してくれる。薄い塗膜で、透けて見えるようにもできる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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