木製フレームに身体へ響く乗り心地 デイムラーSP250 & モーガン・プラス8(2) 英国製V8の世界

公開 : 2025.07.06 17:50

古くから英国車でも採用されてきた、太いトルクに勇ましい響きのV8エンジン 設計の起源には日産やGMも ベントレーにモーガン、マクラーレンまで、UK編集部が個性的な10台の魅力を再確認

毎週140基しかエンジンを組めなかった工場

デイムラーSP250の4速MTにはシンクロメッシュが備わるが、丁寧な変速は不可欠。とはいえ、3・4速にオーバードライブが備わり、気使いは少なくて済む。現オーナーの判断で、ステアリングラックは高精度で軽く回せるラック&ピニオン式へ変更してある。

グリップし過ぎない、当時物のラジアルタイヤのお陰で安定性は高い。平滑な路面なら、確かな自信を抱いたまま駆け回れる。ドラマチックさは薄いかもしれないが、運転は充分に楽しめる。

モーガン・プラス8 と、デイムラーSP250
モーガン・プラス8 と、デイムラーSP250    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

そんなSP250の開発が始まったのは、1958年の春。トライアンフの影響を隠さないシャシーや駆動系は、発売を急いだ結果だった。しかし、工場は1週間に最大140基しかエンジンを生産できなかった。しかも、ジャガーによる買収が終焉を急がせた。

ジャガーを率いるウィリアム・ライオンズ氏は、SP250を好んでいなかった。1961年に発売されたEタイプは大ヒットとなり、需要を賄えずにいた。製造コストのかかる不人気モデルを作り続けることは、理にかなった判断ではなかった。

当時の英国車で最速の1台 ボディフレームは木材

他方、ビュイック由来の技術を進化させたV8エンジンで、ブランドを活性化させたのがモーガンランドローバーがサルーンのP5B用に開発しつつ、レンジローバーを成功させたのと同様に、小さなブランドを成長へ導いた。

プラス8の最高速度は201km/hで、0-161km/h加速は19.0秒。当時のすべての価格帯の英国車で、最速の1台といえた。乗り心地は1930年代の水準といえ、風雨から充分に身を守ることはできなかったが、大目に見ることを許す速さだった。

モーガン・プラス8 (1968~2004年/英国仕様)
モーガン・プラス8 (1968~2004年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

トランスミッションは、当初はモス社製が採用されたが、途中からローバー社製へ変更。バケットシートにアルミホイール、ロッカースイッチが並ぶダッシュボード、3連ワイパーなど、現代化も図られていた。

しかし、ボディフレームは木材。スライディングピラー式のフロントサスペンションに、レバーアームで動かされるダンパー、リアサスペンションのリーフスプリングなど、古びた技術も少なくなかった。

生産能力は週に3台 2004年まで続いた販売

プラス8の生産開始は1968年。驚くことに、ローバーがエンジンの供給を終える、2004年まで販売は続いている。モーガンの生産能力は週に3台と低く、オーダー待ちは7年に及んだ時もあった。

ご登場願ったレッドの1台は1984年式で、オーナーのマイク・シングルトン氏は、6年前に走行距離6万5000kmほどで購入したという。「仕事を退職した時に、今行動しなければ一生後悔するだろう、と考えたんです」

モーガン・プラス8 (1968~2004年/英国仕様)
モーガン・プラス8 (1968~2004年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)/ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

「1970年代には、新車をオーダーしたこともありました。ところが5年も待たされ、最終的にキャンセルしていました」。と振り返る彼は、今のところトラブルフリーだという。2024年に不調になった、3速のシンクロメッシュ以外。

ボンネットはオリジナルではなく、タイヤは205/60サイズを履いている。滑らかな路面の限り、運転体験は素晴らしい。500rpmも回っていれば、どのギアでも粘り強く速度を乗せていける。ステアリングはダイレクトで、コーナリングも鋭い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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