「意外な層」に売れている米国スバル 小さな町で見た自由の音色 英国記者の視点

公開 : 2025.07.02 18:45

ニューヨーク州北部のウッドストックは、かつて伝説的な音楽フェスで賑わった小さな町です。今ではスバル車が数多く走ってますが、その理由は広告戦略にあるようです。AUTOCAR英国記者コラムです。

音楽を愛する小さな町

かつて伝説の音楽フェスティバルが開催されたニューヨーク州のある町は、スバルの4WDワゴンが大好きだ。その理由は、巧みなマーケティングにある。

「ここはタイダイ染めのような場所よ」

ニューヨーク州北部ウッドストックでは、『フォレスター』や『レガシィ』などのスバル車を多く見かけた。
ニューヨーク州北部ウッドストックでは、『フォレスター』や『レガシィ』などのスバル車を多く見かけた。    AUTOCAR

ニューヨーク州北部にあるガソリンスタンドのカフェカウンターにいる女性に、ウッドストックがどんなところか尋ねると、こんな答えが返ってきた。今回の旅の目的地ではなく、たまたま立ち寄っただけだった。

筆者(AUTOCARの英国人記者)は、キャッツキル山地に近い趣のある町だとしか思っていなかったが、彼女の説明を聞いて、そこは “あの” ウッドストック――1960年代の有名なロックフェスティバルで「3日間の平和と音楽」を掲げ、世界中に文化的影響を与えた地だと気づいた。

実際には、フェスティバルは56年前にウッドストックから100km離れた場所で開催されたにもかかわらず、町は明らかに「平和と愛」の雰囲気を残している。

店員は間違っていなかった。ニューヨーク州の田舎でトランプの旗や看板を見かけるのは普通のことだ。なぜなら、ニューヨーク州で最もリベラルな地域は大都市(ニューヨーク市など)であり、米国人は英国人よりも政治的な意見を声高に表明する傾向があるからだ。時折見られる「自由民主党勝利」というステッカーが、英国人の最も騒がしい表現だ。しかし、ウッドストックの近くでは共和党の看板はほとんど見かけない。

「大統領は変わっても、ウータンは永遠だ(Presidents come and go, but Wu-Tang is forever)」と書かれた看板がある。「米国を再びグルーヴィーに(Make America groovy again)」と、CNDのシンボルが入ったTシャツが店の窓に飾られている。(翻訳者注:ウータンはおそらくヒップホップグループのウータン・クランのことと思われます。)

都市部を除けば、ウッドストックはニューヨーク州で最もリベラルな地域の1つだ。2024年の大統領選挙では58%が民主党に投票した。

そして、ウッドストックは米国にとって、平和と愛のパロディのような場所だ。この日曜日の午後、ベジタリアンカフェとハーブ療法の店に囲まれた中央広場では、ドラムサークル(打楽器を使った即興演奏)が行われていた。

そして、もう1つ気づいたことがある。スバルだ。スバルがたくさん、本当にたくさん走っている。筆者が今まで見たどの場所よりも、はるかに多い。ある駐車場では(科学的に厳密な調査ではないことは承知している)、クルマの20%近くがスバルだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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