新型ワゴン『スバル・トレイルシーカー』 担当デザイナーが語るEVへのアプローチ 荷室は大きく、ボディサイズはなるべく小さく!

公開 : 2026.03.05 12:10

3月5日にスバルが発表した新型EV『トレイルシーカー』は、ソルテラをベースに開発されました。ボンネットやドアなどは共用し、SUVとしてのデザインを取り入れたといいます。内田俊一がデザイナーに詳しく聞きました。

アウトバックやフォレスターからの乗り換えを

3月5日にスバルが発表した新型EV『トレイルシーカー』は、同じスバルのソルテラをベースに開発された。ボンネットやドアなどは共用したうえで、SUVとしてのデザインを取り入れたという。デザイナーに、詳しく聞いた。

スバル経営企画本部価値づくり推進室デザイン部主査の中村真一さんは、トレイルシーカーが誕生したきっかけを振り返る。

3月5日にスバルが発表した新型EV『トレイルシーカー』。
3月5日にスバルが発表した新型EV『トレイルシーカー』。    スバル

「環境対応がメインになり、BEVしかできなくなっていくという世の中で、スバルはどうするのか。『今あるガソリン車のアウトバックやフォレスターなどが今後販売できなくなる時代が来る』ということを前提に、企画がスタートしました」

それから「トヨタとのアライアンスを上手く利用し、現ユーザーが困らないようにしないといけない」という考えもあった。

既にソルテラはあったが、荷物を積んでキャンプに行ったり、家族でアウトドアに行ったりするには不自由。さらに、空力的にソルテラはクーペフォルムをまとい航続距離を稼いでいるが、それではラゲッジルームの容量など、スバル・ユーザーのニーズには応えられない。

「とにかく、アウトバッグ、フォレスターからの乗り換え需要に応えられるBEVを作りたかったんです」

荷室は大きく、ボディサイズはなるべく小さく

しかし、荷物を積載することを前提条件にするとデザイン的には不利だ。リアまわりを箱っぽくしていくと、空力的にどんどん悪くなり重くもなる。

「BEVにとって何ひとついいことはないんです。それでも、お客様のライフスタイルを支えるスバルとしては、『今できていることができなくなってしまう』という事態は避けなければいけません」

荷室は大きく、ボディサイズはなるべく小さくすることを考えた。
荷室は大きく、ボディサイズはなるべく小さくすることを考えた。    スバル

デザイナーとしては格好良いフォルムを考えるところだが、今回は「荷室は大きく、ボディサイズはなるべく小さく」という、相反する要素を成立させるため、具体的には何を載せるのかを最初に決めたという。

そこで「スーツケース4つ」、「ゴルフバック4つ」、「大型のドッグゲージなどがギリギリ入る」といったアウトラインを作るのが、今回のテーマとなった。

つまり、トレイルシーカーのデザインのハイライトはリアまわりで、ソルテラとの最大の違いでもあり、アウトバックでできたことをトレイルシーカーでもできるようにすることがポイントだったのだ。

初心に立ち返った時に挙がったもの

その上で、スバルのユーザーは自然派志向でもあることから、レジャーで使う色々な道具たちの中にそのクルマがあった時に馴染みがいいようなデザインを考えた。

「これがスバルらしいBEVのアプローチだと考えて、少しラギットなデザインにしています」

フロントには6つのヘキサゴンを横にスパッと切ったようなデザインを採用。
フロントには6つのヘキサゴンを横にスパッと切ったようなデザインを採用。    スバル

また、井上さんはフロントデザインにも言及する。

「スバルのブランド表現は安心と愉しさ。具体的にはヘキサゴングリルやコの字のヘッドランプ、ターンランプの光り方でスバル車になるという取り組みもやっていました」

しかし、同じような手法は他メーカーも採用しており、さらにヘキサゴングリルを前提としたグリルはBEVでは必要なく、コの字のランプも水平対向エンジンのピストンの動きを可視化したものなのでBEVでは根拠がなくなってしまった。

では何を持ってスバルの顔となりえるのかと初心に立ち返った時に挙がったのが、『水平軸(横基調)』だ。

水平対向エンジンだけでなく、クルマのスタビリティや安定感につながるため、まず水平軸を持たせた。さらに、ヘキサゴンを少し匂わすようなフレーバーをヘッドランプに仕込む。そして、6つのヘキサゴンを横にスパッと切ったようなデザインを採用。

「スバルのことをよく知っているお客様は、そこは韻を踏んだなと感じてもらえるように、新しいお客様には単純に格好良く映ればいいというデザインにしています」

そのうえで、六連星を光らせ、フラットな表現で見せている。

「仮にソルテラの顔があったとして、同じフレーバーではありながら、それをガバッとカバーするようなラギットなデザインにしています」

ソルテラと共通のドアまわりを持ちながら、後付け感のないフロントやリアの造形は、上手く仕上げられているといえる。特にフロントまわりは、今後のスバルBEVで採用されていく考えやモチーフが含まれているかもしれないので注目だ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    Shunichi Uchida

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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