ロータス・エスプリ 4世代(1) ジウジアーロの斬新ウェッジシェイプ へセルに集ったレジェンド

公開 : 2025.08.10 17:45

S1の車重は898kg 燃費に優れた907ユニット

チャップマンは、軽量化への強いこだわりがあった。結果的に、量産仕様のエスプリ S1の車重は898kgに留められた。また907ユニットは燃費に優れ、アメリカ・カリフォルニア州の厳しい排気ガス規制をクリア。主要市場での販売も可能になった。

他方、シャープなボディの量産化は簡単ではなかった。キンバリーが続ける。「コンセプトカーのフロントピラーは、18度で倒れていました」。量産に向けた石膏モデルを前にしたチャップマンとジウジアーロは、ジャケットを脱いで自ら表面を削ったとか。

ロータス・エスプリ S1と、元ロータスCEOのマイク・キンバリー氏
ロータス・エスプリ S1と、元ロータスCEOのマイク・キンバリー氏    マックス・エドレストン(Max Edleston)

「白い粉を巻き上げつつ、フラットなフロントガラスが生み出されました。最終的には、スチールフレームへ当たらないギリギリの、22度へ倒されました」。これ以上の角度では、狙った視覚的な効果を得られなかったそうだ。

創造は難しくない 量産化は簡単ではない

果たして、ジウジアーロによる独創的なエスプリ S1へ歩み寄る。1975年のフランス・パリ・モーターショーでお披露目された時のように、筆者の目には新鮮。オーナーは、ジョナサン・ハックフォード氏で、オリジナル度は極めて高い。

キンバリーへ、改めて印象を尋ねる。「生み出す過程では、何か違うことへ挑戦していました。特定のものから、インスピレーションを受けたわけではありません。本能的な刺激を受けた時に、デザインは生まれるのです」

ロータス・エスプリ S1と、デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ氏
ロータス・エスプリ S1と、デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ氏    マックス・エドレストン(Max Edleston)

お招きした、ジウジアーロも当時を回想する。「創造すること自体は難しくありませんが、量産化は簡単ではありません。プロトタイプでは、最善を尽くします。しかし、例えばテールランプは高価なので、既存品の流用は避けられませんよね」

そう話す彼は、コストによる制約へ以前は不満を抱いていた。自分の名前を記したくないと、口にしていたほど。しかし半世紀を経て、そんな気持ちも和らいだらしい。

この続きは、ロータス・エスプリ 4世代(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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