完璧プロポーション ロータス・エスプリ 4世代(2) 4気筒ターボに見事なシャシーバランス

公開 : 2025.08.10 17:50

世間を驚かせたジウジアーロのくさび形 ヨーロッパのシャシーを延長 S1の車重は898kg 燃費に優れた907ユニット S4はV8ツインターボで300馬力以上 UK編集部が4世代を振り返る

真っすぐ伸びるライン 完璧なプロポーション

ジョナサン・ハックフォード氏は、納屋で眠っていたロータス・エスプリ S1を11年前に購入。徹底的なレストアで、完璧な1977年式仕様へ仕上がっている。ジョルジェット・ジウジアーロ氏のスケッチがそのまま立体になったように、大胆で精悍だ。

ラインが真っすぐ伸び、14インチのウルフレース・アルミホイールが完璧なプロポーションを引き立てる。ドアハンドルやテールライトは、他のモデルからの流用かもしれないが、しっかり調和している。

ホワイトのロータス・エスプリ S1と、レッドのエスプリ SE
ホワイトのロータス・エスプリ S1と、レッドのエスプリ SE    マックス・エドレストン(Max Edleston)

コンセプトカーでは、タータンチェックとオレンジ色のインテリアに、マイク・キンバリー氏は驚いたとか。量産版にもチェックの内装は採用されたが、初期の仕様のみ。直線基調のダッシュボードと相まって、1970年代風のテクノ感が漂う。

シートの座面は低く、背もたれはかなり倒れている。ワイドで見やすいメーターパネルは、エスプリのトレードマークの1つだろう。ペダルの間隔が狭く、左へオフセットしていること以外、運転姿勢は理想的。視界も広い。

2.2Lの910ユニットへ ターボ化で213ps

ウッドノブのシフトレバーを傾け、シトロエン由来の5速MTの1速を選択。クラッチは軽い。16バルブの907ユニットは、162psとパワフルではないものの、軽快にエスプリを押し進める。2基のデロルトキャブレターから、心地良い吸気音が奏でられる。

テストコースを飛ばせば、パワーアシストの備わらないステアリングの精密な反応へ感心する。シャシーはバランスに優れ、ミドシップとして安定性にも唸らされる。同時期のライバル、フェラーリ308へ馬力で届かなくても、200kg軽いことが武器になった。

ロータス・エスプリ SE(1989〜1993年/英国仕様)
ロータス・エスプリ SE(1989〜1993年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

とはいえ、1978年にエスプリはS2へ改良。1980年にタイプ82と呼ばれる、エスプリ・ターボが登場する。エンジンは910ユニットへ更新され、2.2Lから213psを発揮。さらに1981年には、タイプ85と呼ばれるS3へアップデートされた。

その後、ジウジアーロはV8エンジンを積んだエスプリの後継モデル、通称「エトナ」をロータスへ提案する。しかし、量産化されることはなかった。

新世代へ生まれ変わらせたスティーブンス

1990年代を迎えるに当たり、エスプリにはリフレッシュが求められた。それを引き受けたのが、ロータスへ在籍していたデザイナー、ピーター・スティーブンス氏。「公道が前提のショーカーとして、S1は驚くほど巧妙でしたよね」。彼が振り返る。

「それでも、空力の改善が必要でした。空気抵抗のCd値は0.33と聞いていましたが、風洞実験では0.44だったんです。安定性を損なわず、X180型として0.33へ減らすのは、大変な作業でしたね」。リアのバットレスの調整などが、効果的だったようだ。

ロータス・エスプリ SEと、ピーター・スティーブンス氏
ロータス・エスプリ SEと、ピーター・スティーブンス氏    マックス・エドレストン(Max Edleston)

成長した印象を与える必要性も、意識したという。「(ロータスは)キットカーではなく、完成したメジャーなクルマへ変わっていったんです。似合っていなかった、ボディサイドのブラックトリムを省く方法を導き出しました」

スティーブンスによる手直しが、エスプリを新世代へ生まれ変わらせたことは明確。ジウジアーロによるウェッジシェイプは受け継ぎつつ、エッジの滑らかな処理が、主流な量産車らしい雰囲気を漂わせる。全体的な統一感も高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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