昔の日産マイクラは「おばあちゃんのクルマ」 でも悪いことではない 英国記者の視点

公開 : 2025.08.01 06:45

6代目となる日産マイクラが欧州でデビューしました。「高齢者が乗るクルマ」というイメージを払拭し、若返りを目指していますが、果たしてそれは正しいことなのでしょうか? AUTOCAR英国記者コラムです。

キャラクターに一貫性がない

長年にわたり、キャラクターがこれほど大きく変化してきたBセグメント車は、日産『マイクラ』以外にないだろう。少なくとも、購入者ではなく、メーカーの目にはそう映っている。

初代マイクラは、頑丈な箱型の、ごくごくシンプルなクルマだった。2代目モデルは、丸みを帯びたファンキーなデザインになり、ヨーロピアンな雰囲気も増し、1993年に日本車として初めて『欧州カー・オブ・ザ・イヤー』を受賞した。

日産マイクラ(2代目、欧州仕様)
日産マイクラ(2代目、欧州仕様)

3代目モデルは、そのコンセプトをさらに発展させ、上質なデザインを採用。キュートでクラシックなスタイルに、ベークライト風のスイッチ類や伝統的なファブリックを使用し、高級感のある仕上がりとなった。同時に、生産コストも高かったのかもしれない。

そして、2010年に惨事は訪れた。4代目モデルは安っぽくて荒削りな印象で、編集部がそう指摘すると、良識ある日産の担当者も同意した。彼らはしばしば、メディアの評価に腹を立て、それが間違っている理由を説明することもあるが、メディアで酷評されると、上司にやり方を変えるよう説得する口実にもなるそうだ。

この時はまさにそのようなケースで、日産は2016年の5代目マイクラで改善を図り、目立って面白いものではないにしても、明らかに良いクルマになった。しかし、2022年に販売終了となった。

その間、日産のライバルたちは、時折素晴らしいクルマや平凡なクルマを作っていたが、根本的には一貫性があった。少なくとも、目指すものは常に同じだった。

フォードフィエスタは、どの世代もフィエスタらしいクルマである。ルノー・クリオは、初代モデルと同じように、Bセグメントで最もシックなクルマという位置付けを目指している。

実際、あらゆる種類のクルマは、そのコアとなるスピリットを守ろうとしている。例えば、今日のBMW 3シリーズに乗ると、30年以上前の3シリーズと基本的には同じことをしようとしていることが分かると思う。

しかし、ここにまた新しいマイクラが登場した。そう、またも再発明だ。今回はキュートなEVだが、パワートレインだけでなく、キャラクターも(またしても)これまでのマイクラとは異なっているようだ。

若返りを目指すことは正しいのか

発売前の日産のウェブサイトには、「わたしのことを知ってると思ってる? もう一度考えて(Think you know me? Think again)」という広告が掲載されていた。「久しぶり、わたし成長したんだ。近いうちに会おうよ。違いに驚くと思うよ(It’s been a while, and I’ve had a glow up. Let’s meet up soon. You won’t believe the difference.)」

それが本当なら残念なことだと思う。日産はこれまでのマイクラとは違うと考えているかもしれないが、購入者がどれだけそのことに気づき、気にかけているかは疑問だ。

最新型の日産マイクラ(6代目)
最新型の日産マイクラ(6代目)

好きか嫌いかは別として、マイクラは面白いとは言えないものの、落ち着いた雰囲気があり信頼できるクルマという評判を得ている。しかし、エクステリアデザイナーのCho Yongwook氏が語ったように、新型車のデザインは「おばあちゃんのクルマ」というこれまでのイメージを払拭することを目指している。

これは、消費社会でしばしば見られる話だ。クルマ、衣類、ラジオ番組など、高齢者層に人気があるという製品イメージを払拭し、より若々しい新しい顧客層を取り込もうとするものだ。

現在のイメージで実際に弊害があるならば、それはある程度理解できる。60代後半でもジャガーは年寄りのクルマだと思い、購入を避けている人もいる。

そのため、ジャガーが再び輝きを取り戻すことを願って、若い世代にアピールしようとしているのは理解できる。なぜなら、若者はお金を持っていないかもしれないが、年寄りに見られたくはない高齢者には響くからだ。

しかし、Bセグメント車が堅牢性、信頼性、実用性を評価されるのは、本当に悪いことなのだろうか? 人々がこれまでよりも長く働き、健康でいるようになった今、若者と高齢者の違いは以前ほどは明確ではなくなっている。

年齢に関係なく、信頼性が高く、使いやすく、詐欺のような売られ方をしないBセグメント車の、何がそんなに悪いのか? 特定の顧客層を排除するようなことはせずに、誰もが魅力的に感じるBセグメント車を作ることは可能だと思う。もちろん、彼らが耳を傾けてくれることが前提だが。

購入者は過去、マイクラがどのようなクルマであるかを自分で判断してきた。今回だって、そうならない理由はない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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