熟成感ある欧州的な走り 日産マイクラ(マーチ)・エボルブ(2) COTY受賞車と強み共有

公開 : 2025.10.07 19:10

EVへ一新したマイクラ(旧マーチ) 5 E-テックがベース 3代目をイメージさせるライト 優れた空力特性で僅かに長い航続距離 欧州車らしい走り COTY受賞車の強み共有 UK編集部が試乗

優れた空力特性で航続距離は僅かに長い

ルノー5 E-テックと双子の兄弟といえる、6代目の日産マイクラ(旧マーチ)。多少の差別化が図られたボディやインテリアと異なり、パワートレインは完全に共通する。

フロントアクスルに載る駆動用モーターは、122psか150psから選択可能。駆動用バッテリーは、40.0kWhか52.0kWhの2種類から選べる。5 E-テックより僅かに空力特性に優れ、航続距離は後者で12kmほど長い、418kmが主張される。

日産マイクラ(旧マーチ) 52kWh エボルブ(欧州仕様)
日産マイクラ(旧マーチ) 52kWh エボルブ(欧州仕様)

軽快で洗練された身のこなしや、落ち着きのある乗り心地など、多くの強みが同じように備わる。発進加速は、小さな電気自動車らしく活発。高速道路の速度域ではパワー感が明確に低下するが、これもこのクラスの特徴といえる。

ドライブモードは複数あり、エコ・モードではもどかしいほど駆動用モーターのパワーが絞られる。コンフォートとスポーツ・モードなら、本来の最高出力が発揮される。

ワンペダルドライブに対応 欧州車らしい走り

ブレーキペダルは、若干の慣れが必要かもしれない。踏み心地が硬めで、少し鋭く制動力が立ち上がる様子。だが直ぐに順応できる範囲で、実際の効きは頼もしい。

ステアリングホイール裏のパドルで、回生ブレーキは3段階に調整可能。日産らしくワンペダルドライブにも対応し、アクセルペダルを完全に放すことで停止もできる。

日産マイクラ(旧マーチ) 52kWh エボルブ(欧州仕様)
日産マイクラ(旧マーチ) 52kWh エボルブ(欧州仕様)

プラットフォームはAmp-Rスモールと呼ばれるもので、開発はルノーが主導した。その結果、走りのフィーリングは日産車らしくない。後ろには、マルチリンク式のサスペンションが奢られている。

市街地では、キビキビと軽快に進路を選べる。高速道路ではステアリングホイールのすわりに優れ、安定感があり直進性も良い。速度域を問わず、適度に引き締まった乗り心地は好印象で、車内の静寂性も高い。熟成感ある仕上がりが、欧州車らしい。

殆どの競合へ勝る運転体験 笑顔にする魅力

小さなハッチバックとして扱いやすいだけでなく、マイクラには乗り手を笑顔にする魅力がある。5 E-テックと同様に。殆どの競合より、運転体験は優れるといっていい。

航続距離は、オランダ(ネザーランド)の一般道を走らせた結果、400kmに届かなかった。高速道路では減りが速く、290km毎の充電が必要になりそうだ。急速充電は最大100kWで、残量15%から80%まで、最短30分で回復できる。

日産マイクラ(旧マーチ) 52kWh エボルブ(欧州仕様)
日産マイクラ(旧マーチ) 52kWh エボルブ(欧州仕様)

お値段は、英国では2万1495ポンド(約425万円)から。当初、5 E-テックより僅かに高くなる可能性が示されていたが、結果的にはほぼ横並びとなった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    役職:編集者
    自動車業界で10年以上の経験を持つ。欧州COTYの審査員でもある。AUTOCARでは2009年以来、さまざまな役職を歴任。2017年より現職の編集者を務め、印刷版、オンライン版、SNS、動画、ポッドキャストなど、全コンテンツを統括している。業界の経営幹部たちには定期的にインタビューを行い、彼らのストーリーを伝えるとともに、その責任を問うている。これまで運転した中で最高のクルマは、フェラーリ488ピスタ。また、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIにも愛着がある。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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