本領180km/hからの新基準 ロータス・エヴァイヤ(2) 電子制御ナシでは運転できず?

公開 : 2025.08.15 19:10

「速い」概念を覆す電動ハイパーカー、エヴァイヤ 4モーターで2041ps 有機的な斬新ボディ 本領は180km/hから 電子制御ナシでは運転できず? 想定130台の最新ロータスをUK編集部が試乗

本領は180km/hから 電子制御ナシでは運転できず?

ロータスエヴァイヤの加速力は、公道用モデルの概念を覆す。各タイヤを直接駆動するモーターは1万7000rpmまで回転し、総合173.4kg-mもの最大トルクを繰り出す。発進直後から、淀みなく速度を上昇させていく。

電子制御システムなしに、エヴァイヤは運転できないだろう。アクセルペダルを踏んだ瞬間に、349km/hで走行中と同等の速さでタイヤは空転するはず。そのため、極めて有能なトルクベクタリングとトラクション・コントロールが実装されている。

ロータス・エヴァイヤ(欧州仕様)
ロータス・エヴァイヤ(欧州仕様)

0-100km/h加速2.8秒は、現代のハイパーカーとしては珍しい数字ではない。0-160km/hが4.8秒も、驚くほどではない。フェラーリ SF90 ストラダーレも同値で、テスラモデルS プレイドは4.6秒がうたわれる。

しかし、エヴァイヤが本領を発揮するのは、そこから先。充分なダウンフォースが、前輪を路面へ押し付け始めるからだ。実際、前側のモーターは、180km/h程度に達しない限り本来のパワーを生成しない。

0-320km/h加速13.0秒 現実とは思えない速さ

強大なパワーが開放されると、空気を切り裂くように激しさが増していく。160-240km/h加速は、AUTOCARが過去に計測してきた最速のモデルより50%も鋭い、僅か3.0秒。240-320km/h加速では、更にその差は広がる。

0-320km/hタイムは、ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツで22.2秒。これをエヴァイヤは、13.0秒で処理してみせた。恐らく、最新のF1マシンやプロトタイプ・レーサーでも、1秒程しか差を付けられないはず。

ロータス・エヴァイヤ(欧州仕様)
ロータス・エヴァイヤ(欧州仕様)

加速時は、路面の凹凸だけでなく、トルクの高まりでステアリングホイールは震える。モーターとリダクションギアからは、高周波が響く。速度上昇とともに、ロードノイズと風切り音がオーバーラップしていく。

周囲の景色は、現実とは思えない速さで流れていく。ブレーキングポイントが、猛烈な勢いで迫る。冷静で確実に、ペダルを踏み変える必要がある。直前までの経験を、整理するように。ブレーキの効きは、もう少し強力でも良いかもしれないが。

期待通りのシリアスさとスタビリティ

ロータスの技術者は、想定した操縦性を実現できたと主張する。4基のモーターを個別に制御することで、魔法のような身のこなしも可能だろう。しかし、彼らは正解を理解していた。ロータスらしさとは、ナチュラルなフィーリングだった。

かくして、四輪駆動の電動ハイパーカーへ期待される、シリアスさとスタビリティを導いている。もちろん、エリーゼやエミーラとは異なる。エヴァイヤで意識されたのは、一貫性。感触豊かでレスポンシブで、グリップ力は凄まじく、バランスも素晴らしい。

ロータス・エヴァイヤ(欧州仕様)
ロータス・エヴァイヤ(欧州仕様)

限界は極めて高く、公道ではシャシーを活かしきれない。それでも現実的な速度域では、驚くほど穏やかな挙動で信頼感を抱きやすい。乗り心地は僅かに落ち着かないが、速さを考えれば納得の範囲。目的地への移動を、充分快適にこなせるはず。

トルクベクタリングは安定志向。ステアリングは、フェラーリほどクイックではない。路面変化へ少し敏感に反応し、サーキットの速度域でも重めだが、現実的なスピードなら神経質さは皆無。イエローフラッグ中の、ル・マン・プロトタイプのように。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ロータス・エヴァイヤの前後関係

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