創業者一族が語る「家族経営」にこだわる理由 122年の歴史、フォード会長独占インタビュー
公開 : 2025.08.12 06:45
家族なら「誰でもいい」わけではない
フォードの支配権を維持するため、ビル氏は約25年前に、権利を有する家族との四半期ごとの会合を開くようになった。家族全体の利益を守るために全員の結束を図っているのだ。
「他の家族経営企業は、内紛や関心の欠如によって崩壊しがちです。わたし達は家族の利益が徐々に失われていくのを避けたかったため、関心の薄い家族メンバーの株式を買い取り、小さなグループに統合してきました。この体制を維持できていることに満足しており、今後も存続できると確信しています」

ビル氏は2人の息子をフォードに迎え入れたが、一部で批判を招くことは十分承知している。この点に関する彼の考え方は、「フォードは家族のための雇用機関であってはならない」というものであった。
会社を守る強い責任感から、息子たちだけでなく、すでにフォードの取締役である娘のアレクサンドラにも「良い」大学で学位を取得し、自動車業界以外の企業で少なくとも5年間のキャリアを築くことを求めてきた。
姓に関係なく、失敗したり成功したりする機会を与えることで、会社の将来を守る。この計画はうまくいっている、とビル氏は語る。「わたしにはその機会がありませんでした」と少し悔しさもにじませる。「そのため、キャリアの初期には、『自分は姓だけでここにいるのだろうか』とよく自問していました」
入社してまだ1年目のニック・フォード氏は、家族経営の企業で働くことについて興味深い見解を述べている。「悪い日があってはいけないんです。良い面も悪い面も、皆が見ているからです。他の企業で働くのとは大きな違いがあり、大きな責任を伴います。しかし、同時に大きな名誉でもあります」
ニック氏はボストン・コンサルティング社で5年間経営コンサルティングに従事し、現在は、パートナーシップの構築と長期的な企業戦略の策定を担うチームの一員だ。将来計画の大部分は、現時点では秘密だが、それには理由があるという。
「業界は今、将来の課題に備えるための、一種のスピードデート(婚活パーティー)のような時期にあります」と彼は説明する。「心強いのは、多くの企業がフォードとの取引を希望して列を作っていることです。これは、当社のポジションがいかに優れ、ブランドがいかに強いかを物語っています」
モータースポーツに注力する息子
ウィル・フォード氏は、フォード・パフォーマンス部門のゼネラルマネージャーとして、モータースポーツ責任者のマーク・ラッシュブルックと協力し、モータースポーツ活動の発展を担っている。彼によると、現在、マスタングによるレースに「ピラミッド」が形成されており、ジュニアドライビングアカデミーから始まり、ワンメイクシリーズを経て、最高峰のGT3レースまで昇格する仕組みだという。
もちろん、オフロードレースもある。1月には、サウジアラビアで開催されたダカールラリーに参加した。彼はクルマの運転が大好きで、ちょっとしたスピード狂であることを明かしたが、思うようにレースに参加できないことを残念がっている。

インタビュー時に間近に控えていたレッドブルの訪問目的についても尋ねたが、あまり具体的な情報は得られなかった。実は、ビル氏は初めての訪問であるものの、ウィル氏は頻繁に訪れているそうだ。
チームの課題となっている2番目のF1シートに、フォードが推薦する若くて優秀な米国人を起用するのはどうだろう、と冗談めかして提案したところ、反応は冷たかった。「ドライバーの決定はレッドブル次第です」とウィル氏は言う。「ですが、彼らはあらゆる面で協力的なパートナーです」
筆者の提案が少しでも真面目に聞き入れられることを心配したのか、ビル氏は、「わたし達が推薦したドライバーをシートに座らせるよりも、チームが優勝するほうを見たい」と付け加えた。
一方、ニック氏はクルマとレースについてどう考えているのだろうか? 彼は「ウィルが真剣にやるなら、僕も受けて立とう」と力強い発言をした。







































































