プロトでも驚異の完成度 ポルシェ・カイエン・エレクトリック(2) 期待通りの敏捷性と快適性

公開 : 2025.09.01 19:10

電動の新世代カイエンが完成間際 目指すは初代へ並ぶインパクト マカン・エレクトリック似のデザイン 気が遠くなるほどの速さ 期待通りの姿勢制御と敏捷性 UK編集部が試作車へ試乗

気が遠くなるほどの速さ 200km/hまで10秒以下

遂に電動世代へのクロスフェードが始まる、ポルシェカイエン。まだ正確な動力性能は発表されていないが、カイエン・エレクトリック・ターボは0-100km/h加速を3.0秒以下でこなすという。200km/hまでも、10秒かからないそうだ。

V8エンジンのドラマチックさへ惚れていた人は、淡白さが少し寂しく感じられる可能性はある。しかし、気が遠くなるほどの圧倒的な速さと、フレキシブルさは間違いない。

ポルシェ・カイエン・エレクトリック・ターボ(プロトタイプ)
ポルシェ・カイエン・エレクトリック・ターボ(プロトタイプ)

ドライブモードは、コンフォートにノーマル、スポーツ、スポーツプラスの4種類。それぞれ、アクセルレスポンスへ明確な差が設けられている。新開発された合成サウンドシステムが、モードに応じて擬似的な排気音を奏でてくれる。

動的能力の幅は広く、市街地の低速域からアウトバーンの超高速域まで、当たり前のように対応。回生ブレーキは最大600kWまで発電可能で、摩擦ブレーキへの移行もシームレスといって良かった。惰性走行にも対応する。

ポルシェへ期待通りの姿勢制御と敏捷性

動力性能以上に、筆者が感心したのは落ち着いた姿勢制御と敏捷性。エンジンで走る3代目カイエンより車重はだいぶ増えるようだが、実感することは殆どなかった。

ターンインは即時的。オプションの後輪操舵システムと、傾きを抑える低重心化が大きく貢献している。バランスに優れ、正確で精彩に回頭していくマナーは、ポルシェへ期待するものといっていい。

ポルシェ・カイエン・エレクトリック・ターボ(プロトタイプ)
ポルシェ・カイエン・エレクトリック・ターボ(プロトタイプ)

反応の良いステアリングは、重み付けが好ましく均一で、多くのバッテリーEVよりフィーリングも豊か。不自然な印象は、まったくない。

グリップとトラクションも印象的。リアアクスルの機械式リミテッドスリップ・デフと、前後の駆動用モーターによる高度な四輪駆動システムがなせる技だろう。トルク分配が、効果的に機能していた。

軽妙で魅力的な運転体験 悪路性能も高し

乗り心地も素晴らしい。傷んだアスファルトやカーブ途中の隆起部分でも、ボディは安定性を保ったまま。サスペンションは、アクティブ・エアスプリングとツインバルブ・ダンパーという組み合わせで、適度な張りはあるものの、不快な揺れは伝わらない。

姿勢制御は引き締まり、ボディロールを抑えつつ旋回は滑らか。前が285、後ろが315というワイドな22インチ・タイヤは、しっかり路面を捉え続ける。高速道路での直進安定性も良好。コンフォート・モードでは、しっとり静かなクルージングへ浸れる。

ポルシェ・カイエン・エレクトリック・ターボ(プロトタイプ)
ポルシェ・カイエン・エレクトリック・ターボ(プロトタイプ)

標準のカイエン・エレクトリックでも、走りは軽妙で魅力的。リズミカルにカーブを縫っていく仕草は、シャシーの有能ぶりを物語る。ちなみに70km/h以上で10mm、135km/h以上では30mm、自動的に車高がダウン。空力特性を高めるという。

悪路も短時間試したが、滑りやすい急勾配など余裕綽々。グラベルやサンド、ロックといったオフロードモードが用意され、高精度なパワー展開と相まって、定速でスムーズにクリアしていた。最低地上高は245mmとのこと。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポルシェ・カイエン・エレクトリックの前後関係

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