【単なるデートカーの焼き直しではない】6代目ホンダ・プレリュードは、新たなハイブリッドスポーツの『前奏曲』だった!

公開 : 2025.09.04 11:00

モードはひとつだけでもよかったかも

一方で、ドライビングモードを切り替えた際のサスペンションセッティングの変化は、ごくごく小さいように感じられた。たしかにスポーツモードでは操舵時のレスポンスがわずかに鋭くなるほか、タイヤから伝わるゴツゴツ感もほんの少しだけ強くなる。

しかし、それらは神経を研ぎ澄ませてようやく感じられる程度のもの。もしかすると、一般道を走ればその差がもっと明確に感じられるのかもしれないが、私のセンサーではこれが限界。少なくともこのコースで走る限り、「モードはひとつだけでもよかったかも」と思えた。

クルマとの一体感は、一般的なハイブリッドカーではなかなか見出せなかったものだ。
クルマとの一体感は、一般的なハイブリッドカーではなかなか見出せなかったものだ。    神村聖

こう書くとネガティブに響くかもしれないが、裏を返せば、快適性と操縦性を絶妙にバランスさせたこの足回りこそが新型プレリュードにとってはベストともいえる。とりわけターンインの素直な反応、そしてハードコーナリング時にもしっかりとロールを抑制し、そこからステアリングを切り増しても的確に反応してくれる点は見事としかいいようがない。

S+シフトの効果も文句の付けどころがなかった。GTモードもしくはスポーツモードを選ぶとASCが起動。軽やかで抜けのいい快音が耳に届くようになるが、そのレベルはどちらかといえば控えめで、うるさいと感じることはないはず。

それでもエンジン回転数の高まりが聴覚からも認められて、高揚感が何倍にも増幅される。加速時にはステップドギアボックス風にシフトアップしていく様子も、思わず頬がゆるむくらい痛快だ。

しかし、S+シフトが本当にその存在感を発揮するのはコーナーに向けて減速するとき。シフトパドルでダウンシフトすれば『ワン、ウワン、ウワーン』と段階的にエンジン音が上昇。

続いてアペックスに向けてステアリングを切り込めば狙い通りのタイミングでノーズはインを向き、そこからスロットルペダルを踏み込めばもどかしさを一切感じることなく加速に転じて小気味よくコーナーをクリアできる。そこで得られるクルマとの一体感は、一般的なハイブリッドカーではなかなか見出せなかったものといって間違いない。

新型プレリュードは、かつて流行ったデートカーの単なる焼き直しではない。上質さと操る喜びをこれまでにない次元で両立させた、新しい価値観の2ドアクーペというべきだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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