【第12回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~あの点の名は、ユニフォーミティポイント~
公開 : 2025.09.17 17:05
タイヤのことならどんな小さなモノでも見逃さないサイトウサトシが、30年以上蓄積した知識やエピソードを惜しみなく披露するこのブログ。第12回は、ユニフォーミティについて。あの点々のナゾに迫ります。
タイヤは実は、まんまるではないのです
数年前の話になるのですが、某自動車雑誌でタイヤの試乗をした時のこと。この時は、タイヤメーカー主催の試乗会ではなく、タイヤを借りて、こちらでクルマを選定し、装着して試乗インプレするというものでした。
まあ、それ自体は特に珍しいことではなく、よくある試乗のお仕事ではあったのですが、お願いしたショップさんがものすごくハイパフォーマンスところで、タイヤをユニフォーミティ修正して用意してくれたんです。

そもそもユニフォーミティってなに? ということですが、大雑把にいうと、タイヤの均一性とか真円性という意味。タイヤは真ん丸で、厚さ、重さが均一にできているように見えますが、じつは重量の偏りや剛性の不均一が多少なりともあるのです。
例えば、タイヤを組むときにバランスウエイトを付けますよね。バランスを取らずにタイヤを組んで走ると振動が出ます。車速を上げるほど大きくなっていって80km/hくらいでピークになり、それ以上車速を上げると振動が少なくなっていきます。
この振動はブルブル震えるような上下動で、ハンドルにひどい振動が出る場合は前輪のバランスがとれていないということ。後輪の場合はハンドルにも振動は出ますが、オシリや背中のあたりが揺すられるような振動として感じられることが多いです。
自分のクルマにこんな症状がある方は、タイヤショップさんでバランスチェックをしてもらうことをお薦めします。
ちなみに、これとよく似た振動で、車速に関係なく振動が出ている場合は、高い確率でホイールナットが緩んでいることが考えられます。これを感じたら大急ぎでクルマを停め、ホイールの締まり具合を確認してください。最悪、走行中にタイヤが外れてしまいます(経験あり)。
ユニフォーミティを構成する3つの要因
話が逸れてしまいました。
ユニフォーミティを構成する要因は、主に3つあります。

ひとつめは、先に例に挙げた重量バランスの不均一です。RFV(ラジアル・フォース・バリエーション)と言い、主にタイヤの重量バランスが要因で、タイヤに上下方向の振動を起こします。
ふたつめは、LFV(ラテラル・フォース・バリエーション)という横(左右)方向への振動。タイヤの左右の剛性の不均一などに起因します。振動となって表れる場合や、必ず片方にハンドルが取られるといった症状が出ることがあります。
3つめはTFV(タンジェンシャル・フォース・バリエーション)で、タイヤの前後方向に振動です。タイヤの重量、特にトレッド面の円周上のどこかに偏りがある場合などに、TFVがみられることがあります。重量だけでなく、剛性の不均一でこの動きが出ることも。
とはいえ、LFVとTFVは、ひとつめほど顕著には現れることは少ないと思います。ただ、タイヤの作られる工程を見ると(これは別稿でハナシをしたいと思います)、まだアナログな部分が残されています。昔に比べると、人が実際に手を入れて作業をする場面はだいぶ少なくなっていますが、それでも要所で残っています。
じつは完全自動のタイヤ製造機械もあるのですが、これもまた別の機会にハナシをします。
ともあれ、タイヤ製造は案外アナログなので、それを見ると、完全バランスのタイヤは作るのが難しいのだろうなというのが理解できます。
そもそもタイヤを履き替えるとき、必ず行っているバランス取りは、タイヤの重量バランスが均一ではないことを示しています。
タイヤをよく観察すると、タイヤの側面に黄色い点と赤い点が打ってあります。黄色い点は軽点マークと呼ばれ、タイヤの重量が最も軽い部分を示すマークです。ここにホイールの重いところ=バルブ部を合わせて取り付けます。タイヤとホイール、トータルで重量バランスをとっているわけです。一般的には、新しいタイヤに履き替えるときに使います。
赤いポイントはユニフォーミティポイントと呼ばれています。ここはタイヤの中で一番高い部分に打たれています。タイヤは重量バランスだけでなく、形状的にも厳密にいうと厚みは均一ではありません。このユニフォーミティポイントに、ホイール側に打たれている白または青い点を合わせます。この点は、ホイール径の最も小さい部分になっています。高さのバランスを整えることで、ユニフォーミティ性を高めようとしているわけです。
工場ラインから出てきた新車はこのユニフォーミティポイントに合わせてタイヤ&ホイールが組まれています。
最近では軽点やユニフォーミティポイントを打っていないタイヤもあるのですが、個人的にはあるといいなあと考えています。

