【サマータイヤと比べても違和感なし】ブリヂストンの新型スタッドレスタイヤ『ブリザックWZ-1』の進化を体感!

公開 : 2025.08.29 11:45

ブリヂストンが、商品設計基盤技術ENLITEN(エンライトン)を搭載した新型スタッドレスタイヤ『ブリザックWZ-1』を9月より発売開始します。タイヤ分析の達人、斎藤聡がスケートリンクとドライ路での試乗をレポートします。

優先順位1位はICE性能

ブリヂストンが、商品設計基盤技術『ENLITEN(エンライトン)』を搭載した新型スタッドレスタイヤ『ブリザックWZ-1』を発表。9月より発売が開始される。

発売に先立って、試乗するチャンスに恵まれたので、タイヤの概要と試乗インプレッションを合わせて紹介しよう。

ブリヂストンの新型スタッドレスタイヤ『ブリザックWZ-1』は9月発売。
ブリヂストンの新型スタッドレスタイヤ『ブリザックWZ-1』は9月発売。    ブリヂストン

このタイヤはブリザック・シリーズの最新モデルで、ブリザックVRX3の後継モデルとなる。

特徴は、エンライトンを用いてタイヤの構造から接地面形状、コンパウンドまで、すべてが新設計となっているところ。

求めたのは、1:断トツのICEコントロール性、2:あらゆる路面での高いパフォーマンス、3:サスティナビリティへの貢献の3点。

優先順位の1位にICE性能を置き、これを徹底的に突き詰め、氷上性能へのこだわりを見せる一方、単なる氷上特化型スタッドレスタイヤではなく、アイス、スノー、シャーベット、ウェット、ドライ、すべての路面で高いパフォーマンスを謳っている。

興味深いのは、ICE性能を高めるための『除水』の考え方だ。

VRX3では横溝やブロック接地面への水の侵入を抑える工夫がなされていたが、WZ-1ではこの考え方をさらに進め、ブロック形状の工夫で接地面への水の侵入を抑えるとともに、トレッドブロックに吸水性を高めた『L字タンクサイプ』を採用(3Dサイプと併用)することで、トレッド面と路面の水を吸水。

コンパウンドには、従来よりもソフトなダブルコンタクト発泡ゴムを採用して、ゴムの気泡で水分を除去するとともに路面とのミクロの密着性をアップさせた。

それに加えて、親水性向上ポリマーを新配合。このポリマーは水と摩擦力を作り出す特性を持っており、これによって抵抗(=摩擦力)を引き出し、グリップ性能として使っているのだ。

このほか、新タイヤ形状による接地圧分布の均一化をさらに高めることによって、氷上ブレーキを11%短縮、氷上旋回(ラップタイム)を4%短縮している。

また、タイヤの柔軟性を保つロングステイブルポリマーを増量したことで、経年劣化による性能低下を抑制。4年後の性能も担保している。

安心感につながる『路面を捉える力』

試乗会は、スケートセンターと周辺の一般道で行われた。

まずはアイス路面から。試乗車はトヨタヤリスに185/60R15 84Qを装着。WZ-1と先代モデルとなるVRX3の比較試乗をすることができた。

トレッドブロックに吸水性を高めた『L字タンクサイプ』を採用。
トレッドブロックに吸水性を高めた『L字タンクサイプ』を採用。    ブリヂストン

乗り比べてまず感じたのは、WZ-1のほうがグリップ感がよりはっきりと感じ取れたこと。スタート地点にクルマを進めた瞬間から、タイヤが路面にヒタッと密着しているような感触が強くなっている。

試乗前に氷温を簡易的なセンサーで調べたところ、マイナス0.8度と比較的暖かい、つまり表面に水がにじみやすい状況だった。

そのため、氷のグリップ性能が得意といえるVRX3でも、どこか接地面積が少ないような(大げさに言うと)心もとなさがあり、発進加速時も、いつの間にか滑り(タイヤの空転)が多くなっているようなグリップコントロールの難しさがあった。

ところがWZ-1に乗り換えてみると、スタート地点にクルマを進めるゆっくりとしたスピードでさえ、明らかに氷の路面にタイヤが密着しているようなグリップ感があり、安定感がある。

発進時も「えっ?」と声を出してしまうくらいタイヤの滑る様子がわかりやすく、タイヤを空転させないようにアクセルコントロールするのもやりやすかった。

もちろん、雑な操作で走ってもはっきり判るほどの差はないので誤解なきよう。

氷上旋回では、ハンドルの切り出しから徐々に旋回に入り、さらにハンドルを切り足していったときのグリップの落ち方はVRXとWZ-1は似ていた。トレッドデザインが大きく影響する部分なので、いずれも縦溝主体のリブデザインで、似た手応えになっているのではないかと思う。

いずれも、深くハンドルを切っていっても(切り過ぎても)唐突にグリップが抜けるようなところがなく、穏やかにグリップが落ちていくものだった。

違うのは、WZ-1のほうがハンドルの切り始めから旋回に入るまでの手応えが明瞭で、タイヤが路面をとらえているのが判り易かったこと。

また、車速を上げて……といっても1km/h前後だが、クルマが外に膨らんでしまった場合でも、アクセルオフでグリップがすぐに戻ってくる。舵角を増やしていった場合も同様で、ハンドルを戻すと手応えにグリップが戻ってくるので、コントロールがしやすかった。リアルワールドでは大きな安心感につながると思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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