AIはタイヤ設計をどう変える? 仮想空間でトレッドパターン最適化 世界初の溝付きタイヤ登場から120年
公開 : 2025.09.18 07:45
コンチネンタルは今年、世界初の溝付きタイヤの登場から120周年を迎えたと発表しました。溝の模様はトレッドパターンと呼ばれ、安全性やハンドリングに大きな影響を与えます。その設計には今後AIが活用されるとのこと。
溝付きタイヤ誕生から120年余り 進化は止まらず
他の多くの分野と同様に、タイヤ設計も人工知能(AI)の影響を受けている。トレッドパターンと呼ばれる溝の模様の効果を予測し、実世界での挙動をシミュレートするために使われている。
タイヤは長い進化の道を歩んできた。その歴史を振り返ることで、変遷をより深く理解することができる。

トレッドが初めて登場したのは、今から120年余り前のこと。ダンロップが従来の滑らかなタイヤにシンプルな溝を追加しようとしていた矢先、コンチネンタルが先駆けて実現したのだ。
1906年のダンロップの広告にはこうあった。「これが噂の『滑らないダンロップタイヤ』だ」。しかし、その3年前、コンチネンタルはフランクフルトで開催されたドイツ自動車ショーの新聞広告で、次のように来場者を誘った。「100mmの空気入りタイヤは85mmと90mmのリムに適合する。125mmの空気入りタイヤは120mmリムに適合する。どちらも滑り止め加工あり・なしのタイプがある」
当時はシンプルな滑り止めの溝(コンチネンタルは縦溝、ダンロップは横溝)を手作業で刻んでいたが、現代のトレッドパターンははるかに複雑だ。
かなりランダムに配置されているように見えるトレッドパターンもあれば、規則的なものもあるが、いずれも目的に合わせて綿密に設計されており、似たような特徴と構成要素を備えている。
どのトレッドパターンにも、路面と接触するブロック(塊)という部分がある。このブロックの鋭いエッジが、グリップを生み出す上で重要な役割を果たす。
溝はブロック間の隙間であり、水を排出する役割を持つ。溝はさまざまな方向に配置され、タイヤ周縁部にはメインの溝を補完するために複数の横溝が設けられる。
リブはタイヤの回転方向に(縦方向)走る固い帯状の構造で、安定性とシャープなステアリング操作を実現する。最も巧妙な特徴はサイプだろう。サイプはブロックに施された微細な溝で、トレッドの柔軟性を高める役割を担う。
サイプはエッジ(路面との接触面)を増やし、グリップを向上させる。また、雪用タイヤの複雑な三次元サイプは雪をしっかりと捉え、路面の圧雪や氷にも驚くほどのグリップを発揮する(雪だるまや雪玉のように、雪同士はくっつきやすい)。
このように120年にわたって育まれてきた技術は驚くほど複雑だ。だからこそ、その性能向上にCADやシミュレーションが重要な役割を果たしている。
タイヤ開発者は技術的に必要な構造を考案し、それをベースに工業デザイナーが特徴的なパターンを創出する。見た目も重要だからだ。
AIが重要視される理由は、その能力に関する誇大宣伝を抜きにしても、膨大なデータをこれまで不可能だった詳細なレベルで分析することに優れているからだ。
今回のケースでは、AIによって仮想空間でトレッドパターンを最適化してから実物の試作品を作るという活用方法が有用で、性能とグリップの向上につながることが期待されている。


