ジープ電動化の羅針盤に? コンパス・フルエレクトリック 新たな挑戦 際立つ方向性も欲しい

公開 : 2025.10.21 19:05

欧州でのシェア拡大が狙われた電動の新型コンパス 214psの前輪駆動 モーターで出だし活発 サスペンションは硬め 航続400km前後 ハイブリッド版も登場 UK編集部が試乗

欧州でのシェア拡大を達成したアベンジャー

ブランド力の育成は、簡単ではない。マニアでなくても、メルセデス・ベンツにはクラス最高の完成度を、フェラーリには圧倒的な速さを期待するだろう。

しかし、新たな挑戦で新たな成功を導く例もある。ジープは電動クロスオーバーのアベンジャーを投入し、欧州でのシェア拡大を達成してみせた。電動の3代目、コンパス・フルエレクトリックは、この流れを補強できるだろうか。

ジープ・コンパス・フルエレクトリック・ファーストエディション(欧州仕様)
ジープ・コンパス・フルエレクトリック・ファーストエディション(欧州仕様)

プラットフォームは、ステランティス・グループのSTLA。プジョー3008や、シトロエンC5 エアクロスも採用するものだ。7本スロットのフロントグリルにスクエアなフォルムなどで、ボディはジープらしさが演出されている。

214psの前輪駆動 ハイブリッド版も登場

今回試乗したのは、214psの駆動用モーターと73.7kWhのバッテリーを積んだ、前輪駆動版。リアに2基目のモーターを積んだ四輪駆動や、97kWhのバッテリーによるロングレンジ版も用意される。ジープだから、四駆の方が先でも良かったように思うが。

3008と同様に、ハイブリッド版も続く。こちらは1.2L 3気筒ターボエンジンに、電気モーター内臓の6速デュアルクラッチATが組まれる。1.6L 4気筒のプラグイン・ハイブリッドも用意される。いずれも、グループ内ではおなじみの内容だろう。

ジープ・コンパス・フルエレクトリック・ファーストエディション(欧州仕様)
ジープ・コンパス・フルエレクトリック・ファーストエディション(欧州仕様)

見た目は電動版とほぼ同じで、違いはフロントグリルとマフラーの有無程度。サスペンションは、電動版はリアがマルチリンクなのに対し、ハイブリッド版ではトーションビームになる。緻密な改良で、他ブランドと走りの印象を差別化したとも主張される。

ウェットスーツ風素材のシート 広い荷室

インテリアは、直線基調の落ち着いたデザインでモダン。ダッシュボード上の収納トレイや、センターコンソール下部の充電パッドと小物入れなど、実用性は高そうだ。

シートはウェットスーツ風の素材で覆われ、個性的。そのまま、水洗いできるわけではないようだが。オプションのパワーシートにはマッサージ機能も備わるが、標準のシートの方がクッションは快適。しっかりした座面で、下半身を支えてくれる。

ジープ・コンパス・フルエレクトリック・ファーストエディション(欧州仕様)
ジープ・コンパス・フルエレクトリック・ファーストエディション(欧州仕様)

中央のワイドなタッチモニターが目立つものの、インフォテインメント用やシフトセレクター、ドライブモードなど、実際に押せるハードボタンも少なくない。システムの反応は素早く、操作性は良好。メニュー構造は、もう少し論理的でも良いだろう。

後席の空間はフロアが高めで、シートは背もたれが置き気味。荷室容量は550Lと広い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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