フェラーリ初EVは航続距離530kmの4ドアGT 快適性とスリル満点のハンドリング両立 本物の「エンジン音」も
公開 : 2025.10.10 06:45
他に類を見ないEVプラットフォーム
フェラーリのEV用プラットフォームは、現時点で他モデルへの採用は未確認だが、最小限のオーバーハング、「極めて短い」ホイールベース、そしてベルリネッタ(クーペ)に着想を得たレイアウトになっているという。
最大の特徴は、ドライビング・ポジションがフロントアクスルに近い位置にあることだ。フェラーリによると、これにより車重2300kgのエレットリカは「最も純粋なダイナミック・フィードバックを提供しつつ、乗降性を確保し、快適性を最大化する」という。

シート下のフロアパンに統合されたバッテリーは、総容量122kWhで市販EV中最大級。800Vの電気システムにより、最大350kWの充電速度を実現した。
ただし、開発の焦点は絶対的な航続距離ではなく、ハイパフォーマンスとドライバー・エンゲージメントにあった。その結果、公称航続距離は530kmとされている。これは高出力のクアッドモーターEVとしては競争力があるものの、市場最長クラスのEVには及ばない。
特筆すべきは、フロア下に13個のモジュールを単層で配置し、さらに後部座席下部に2個を追加するという珍しい構造だ。このレイアウトにより、バッテリー容量を損なわずにホイールベースを可能な限り短縮。同時に重量配分を最適化し、前後47:53のバランスを実現している。
フェラーリはさらに、バッテリー重量の85%をフロア下に集中させる設計によって、エレットリカの重心高は「同等の内燃機関車より80mm低い」と主張している。
バッテリー本体は、韓国企業SKオン(SK On)製のセルを使用しつつ、マラネロで設計・組み立てられている。エネルギー密度は195Wh/kgで、「市販EVの中で最高」だという。
エンジンに代わるクアッドモーター
バッテリーからの電力は4輪それぞれに配置された4基のモーターに供給される。4基を連携させることで、フェラーリのロードカー史上最高の出力と、大半の市販車を数倍上回るトルクを実現している。
後輪モーターは各421psを発生し、合計842psとなる。前輪モーターはさらに286psを加える。4基の合計出力値はまだ公表されていないが、これまでで最もパワフルなモデルの1つとなることは間違いないだろう。

フェラーリは、フルスロットル時には1000psを超える出力を発揮するとしている。これにより、0-100km/h加速2.5秒(F80よりわずか0.3秒遅い)、最高速度310km/hを達成する。
また、フロントアクスルは最大357kg-mのトルクを路面に伝達可能だという。一方リアは、モータートルクをトランスミッションで増幅させ、驚異的な816kg-mを発生する。モーターは静止状態から2万5000rpmの最高回転数まで1秒未満で到達する。
4基のモーターを駆使することで完全な4輪トルクベクタリングを実現し、アジリティと安定性を最大限に高める。また前輪モーターは不要時に(わずか0.5秒で)切り離せ、高速巡航時などに効率向上のため純粋な後輪駆動とすることができる。
モーターは完全自社開発・製造のeアクスルユニットに収められている。筐体すらフェラーリの自社鋳造所で製造され、「完璧な製造品質を確保し、工程全体を厳密に管理」しているという。
F80と同様、モーターのステーターとローターにはハルバッハ配列を採用した。磁石の極をすべて異なる方向に向けることで、磁力を集中ささせ、エネルギーロスを回避している。

































