【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#19 純正オーディオは石碑だぜ!

公開 : 2025.09.26 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第19回は『純正オーディオは石碑だぜ!』を語ります。

ユーミンで苗場へGO!

男鹿半島目指して、大貴族号(先代マセラティクアトロポルテ)を走らせる私と安ド二等兵(弊社スタッフ)。前回は『関越トンネル事故通行止め』の表示にビビり、国道17号に迂回したところまで進んだ。

国道17号で三国峠越えとなれば、我々世代にとっては『苗場(スキー場)へGO!』である。苗場と言えばユーミンの聖地。10年ほど前、初めて苗場プリンスホテルのユーミンコンサートに行かせていただいたが、あれは本当に素晴らしかった。

男鹿半島目指して走る、大貴族号こと清水草一の先代マセラティ・クアトロポルテ。
男鹿半島目指して走る、大貴族号こと清水草一の先代マセラティ・クアトロポルテ。    清水草一

周囲のお客さん(中高年)が全員、ユーミンが次に何を歌うのかを知っているのが謎だったが、ユーミンこそ私のソウルサウンドである。

オレ「安ドよ。ユーミンをかけてもいいか?」

安ド「了解です」

私はスマホでユーミンをかけた。廃墟っぽい建物が散在する、ダメ~な感じの国道17号線が、一瞬でステキな青春勝ち組ロードに変わった。

今でも需要はあるんだね!

大貴族号は18年落ち。純正オーディオはFM/AMラジオとCDのみで、スマホに対応しているはずもない。

CDに関しては、メインのプレーヤーにプラスして、チェンジャーが後席とトランクに計2基ついている。

ネット通販で見つけたFMトランスミッター。激安の逸品(2000円くらい)を購入。
ネット通販で見つけたFMトランスミッター。激安の逸品(2000円くらい)を購入。    清水草一

まだCDが頼りだった時代、あれを入れ替えるのは実に面倒だった。CDチェンジャーがふたつあれば、好きな音楽は大抵かけられるってことで、最初のオーナー様(たぶん大金持ち)が奮発なさったのだろう。

しかし、今やCDもオワコン。私もほとんど捨ててしまった。大貴族号の合計3基のCDプレーヤーは、動くのかどうかさえ知らない。もはや石碑である。かと言って、センターモニターの表示で操作する純正オーディオを交換するなんて、想像を絶する難事業。ダッシュボードのカーボン部分に、大穴を開ける必要がありそうだ。

どしたらいいのか。昔あったFMトランスミッターって、まだあるかなぁ……。

検索したら、あったあった! 今でも需要はあるんだね!

私はネット通販で激安の逸品(2000円くらい)を購入し、見事、大貴族号の純正オーディオを鳴らすことに成功。今こうしてユーミンを聴き、しんみりしているわけである。

ついでに言うと、ナビも18年前の純正品のまま。もちろん交換なんてムリムリ! 18年前のナビ(国産品です)って、今見ると画像はメチャ粗いし情報は古いし、液晶画面に10円ハゲもあるし、これまた完全に石碑。ナビもスマホが頼りだ。

スマホの交通情報を見ると、関越トンネル手前で、数キロの通行止め渋滞が起きているようだ。何も考えずに突進したクルマたちが、「通行止めってマジだったのかよ!」とか言いながら、イライラしている様子が目に浮かぶ。ダメ~な国道に迂回した我々の大勝利である。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

清水草一の自動車ラスト・ロマンの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事