CX-60ディーゼルを通じて考えるマツダの現在地と未来【日本版編集長コラム#51】

公開 : 2025.10.12 12:05

現行型は昨年12月に商品改良

さて、今回お借りしたのは『マツダCX-60XDエクスクルーシブ・モード』。パワーユニットは3.3Lの直列6気筒ディーゼルで、駆動方式は4WDとなる(ちなみにエクスクルーシブ・モードは本稿執筆直前の発表でラインナップ落ち)。

CX-60のパワートレインは、このディーゼルに加え、同エンジンをベースとしたマイルドハイブリッド(MHEV)、2.5L直列4気筒のガソリン、同エンジンをベースとしたプラグインハイブリッド(PHEV)の4種類を用意。MHEVとPHEVは4WDのみとなり、他はリア駆動の2WDも設定される。

なんといっても、CX-60はデザインが素晴らしい!
なんといっても、CX-60はデザインが素晴らしい!    平井大介

現行型は昨年12月に商品改良を受けたモデル。その特徴はなんといっても操縦安定性と乗り心地の向上で、それまで評判の芳しくなかった部分に手を入れた形だ。筆者は今年初めの試乗会で取材し、前後して昨年秋にはCX-80の試乗会も参加。特に後者ではエンジニアと直接話もしたが、サスペンションセッティングに苦戦のあとが感じられた。

しかしその中で、車重が今回のエクスクルーシブ・モードでも1870kgに収まっているディーゼル系は、許容範囲に入っていると思う。今回は約700km乗らせて頂いて、最初は乗り心地もハンドリングも何だか落ち着かない雰囲気もあったが、だんだんと慣れてきて最終的には気にならなくなった。

そればかりか、大排気量のディーゼルはなかなか気持ち良さもあり、イベント用の大量の荷物を満載しても力強く走ってくれて、そんな状況での17.2km/Lという平均燃費も充分な実用性に感じた。

そしてなんといっても、CX-60はデザインが素晴らしい!

全体のフォルム、プラチナクオーツメタリックのボディカラー、ピュアホワイトのインテリア。毎回乗るたびに、『いいデザインのクルマに乗っている』という喜びがあった。低音がよく聴こえるBOSE製のスーピーカーも、気分を高めてくれる。

細かいところで気になるところもあったが、それらを全て補うだけのデザイン力があり、最終的にはこのクルマが好きになった。しかもこれが500万円を切る491万1500円という車両価格で購入できるのも、モデル内容を考えると良心的だ。

トランプ関税の大打撃

さて、現在マツダは、トランプ関税の大打撃を受けてかなり厳しい状況にある。通期の影響金額はなんと2333億円だ。

8月に行われた第一四半期決算説明会の後、広報に質問した回答によれば、純粋な関税対策として仕向け地の変更や米国工場の稼働率向上で881億円の改善を見込んでいて、台数構成のマイナスを含めても608億円のプラス効果になるという。

こちらは2021年のリニューアルオープン時に撮影されたマツダの防府工場。
こちらは2021年のリニューアルオープン時に撮影されたマツダの防府工場。    マツダ

また、従来から計画されていた固定費および原価低減によるコスト改善を400億円ずつ行う。つまり608+400+400=1408億円をオフセットできる想定だ。

元々マツダは、2027年までに固定費と原価をそれぞれ1000億円、合計2000億円削減する構造的原価低減活動を全社的に取り組んでおり、そういった流れの中でトランプ関税が発生したことは、まだ幸運だったのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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