EV用モーターのスタートアップ企業 技術革新の最前線に 次世代インホイールモーターの試験開始

公開 : 2025.10.23 06:45

ドイツの新興企業ディープドライブは、インホイールモーターの公開試験を開始しました。走行性能を高めるだけでなく、エネルギーロスを減らして効率性を向上させ、車両デザインにも大きな影響を与えるとされています。

若手エンジニアによる新進気鋭の企業

ドイツに拠点を置く電気モーター開発企業ディープドライブ(Deepdrive)は、EV用インホイールモーターの公開試験を開始した。効率性と経済性において革新をもたらす技術だという。

モーターはボルボテスラのプロトタイプに搭載され、ザルツブルクリンク・サーキットで試験を行っている。同社は効率性(電費)を最大20%向上すると同時に、省スペース化により「前例のない」プロポーションを実現できると説明している。

ディープドライブのモーター試験に用いられているテスラ車
ディープドライブのモーター試験に用いられているテスラ車

9月にドイツで開催されたミュンヘン・モーターショーでは、ディープドライブの共同創業者兼チーフエンジニアのアレックス・ローゼン氏がAUTOCARに対し、2028年までに「小規模な量産」段階へ移行する計画であり、すでに顧客が製品を待っていると語った。

パイロット生産施設の設立のため、すでにフォルクスワーゲンBMWなどの出資者から約5000万ユーロ(約88億円)を調達済みだ。

ローゼン氏は、インホイールモーターの重量と複雑化の問題を認めたが、同社の研究開発により、量産化が実現可能かつ経済的なレベルにまでこれらの問題を軽減したと述べた。

ディープドライブは2021年、野心的な若手エンジニア7名によって設立された。彼らの大半は、ミュンヘン大学でのフォーミュラ・スチューデントチームへの参加を通じて知り合った仲だ。

卒業後、メンバーはドイツ国内の技術大手に就職したが、インホイールモーターの大きな可能性に「夢中」になったそうだ。しかし、就職先の規模の巨大さとそれに伴うイノベーションの遅さにフラストレーションを感じ、その結果としてディープドライブが設立されることになった。

「インホイールモーターの開発が、わたし達の最初の大きなアイデアでした」とローゼン氏は語る。「ライバルとなるEV駆動システムも過去4年で性能を向上させていますが、インホイールモーターの潜在的可能性は依然として大きいと信じています」

「創業当時、従来のEV駆動システムの効率はひどいものでした。大半は熱や摩擦による約40%の損失に悩まされていたのです。現在では25%程度まで改善されましたが、それでも大きな余地が残っています」

「エネルギー効率に加え、インホイールモーターには他の大きな利点もあります。優れた性能と極めて正確なトルクベクタリングを実現でき、パッケージングスペースも節約できます。四輪駆動はほぼ当然ながら可能であり、非常に効果的な回生ブレーキも同様です」

さらに最近では、ディープドライブ独自のデュアルローターモーターを開発し、特許を取得した。従来のシングルローターモーターを2基使用するよりも軽量で、一般的な搭載位置(同社では「セントラル・ドライブ」と呼ばれる)に適しているという。ローゼン氏は、デュアルローターの理論自体は新しくないことを認めつつも、これを実用化する技術を開発したのはディープドライブが初めてだとしている。

コンパクトなため小型車への搭載が容易なだけでなく、同社のデュアルローターモーターは素材となる銅や鉄の使用量を削減でき、磁石も少なく済むため、コスト面で大きな優位性があるとローゼン氏は説明する。

デュアルローターモーターはすでにBMW車での試験を実施しており、技術大手コンチネンタルが強い関心を示している。

「革新の余地はまだまだあります」とローゼン氏は力を込める。「当社のモーターはさらに小型化・軽量化が可能で、材料費もさらに削減できると考えています。近いうちに詳細を明らかにできるでしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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