刺激的な工場見学 モーガン・エクスペリエンスセンターへ潜入(2) 現代技術が伝統手法と融合

公開 : 2025.11.30 17:50

英国のモーガン・エクスペリエンスセンターは入場無料 戦前のクラシックから近年のコンセプトカーまで 2時間の工場見学は約6600円 商談を迫る営業マンなし UK編集部が見学ツアーを体験

手作業で成形されるアルミ製ボディ

モーガンの工場見学は、ボディのワークショップからスタートする。最終的な仕上げ行程まで、順を追って確かめられる。最も印象深いことは、現代的な量産方法とは一線を画し続けてきた、ブランドの姿勢だろう。

アルミニウムのパネルと、木材のアッシュ材のフレームで構成されるボディは、仕上がり精度を維持するため、専用のプラットフォーム上で作られる。ボディパネルの成形は手作業。定期的に寸法が計測され、狂いがないことが確かめられる。

モーガンの量産工場の様子。シルバーのプラスシックスは、ラインオフ前の最終チェックを待つばかり
モーガンの量産工場の様子。シルバーのプラスシックスは、ラインオフ前の最終チェックを待つばかり    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ワークショップには、プラスフォーとプラスシックスのホイールアーチを成形するための、古い金型が飾られていた。筆者が生まれる前から、この工場にあったはず。数1000台という、特徴的なフォルムの雛形になってきたのだろう。

伝統的な雰囲気の作業場に最新エンジン

モーガンで26年間勤務する技術者、デイビッド・アンドリュース氏は、プレスブレーキと呼ばれるマシンを操作し、70tもの圧力で厚さ2mmのスチール板をプレス。ダッシュボードやサスペンションマウント、エンジンルームの部品などを作っている。

これには、非常に高度な技術が必要だとか。製造品質の一貫性を高め、生産時間を短縮するうえで、重要な工程の1つになる。年間500台だった生産能力が、近年は650台前後へ増えたことは、彼の職人技が貢献しているに違いない。

モーガンの量産工場の様子。アッシュ材のボディフレームに、アルミ製パネルが張られる
モーガンの量産工場の様子。アッシュ材のボディフレームに、アルミ製パネルが張られる    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

さらに、シャシー・ワークショップへ。現代的な技術が、伝統的な手法と見事に融合していることへ感心するはず。最新のCXシャシーは、アルミ製。サスペンションは、リーフスプリングからダブルウイッシュボーンのコイルへ更新されている。

エンジンは、スーパー3ではフォード由来の1.5L 3気筒で、プラスフォーはフォードの4気筒。プラスシックスには、BMWから届けられる直列6気筒が載っている。伝統的な雰囲気が残るワークショップとは、不釣り合いなほど現代的なユニットだ。

モーガンが成し遂げた技術的な革新

最後に、インテリアのワークショップへ足を進める。モーガンでは標準となる、ブラックかタンのブリッジ・オブ・ウィアー社製レザーが、特有の香りを放つ。ここへ車両が進む頃には完成目前だが、フェンダーは作業の邪魔になるため外されたままだ。

多様にカスタマイズ可能だから、顧客の好みが見れて面白い。ブリティッシュ・レーシング・グリーンのボディに、タン・レザーのインテリア、ブラックのワイヤーホイールというコーディネートのスピードシックスは、素晴らしいコーディネートに思えた。

モーガンの量産工場の様子
モーガンの量産工場の様子    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

塗装の艶は深く、パネルの隙間は均等。モーガンが成し遂げた技術的な革新を象徴する、高い品質が表れている。プロダクトの個性はそのままに、着実に進化している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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