愛する人を失う悲しみ? デルタ・インテグラーレ・エボとの惜別(2) 最大級の幸福感

公開 : 2025.12.06 17:50

欠点はあっても、それ以上の体験

欠点は少なくない。ダッシュボードの奥、スカットルパネルは振動し、ボディはロールする。状態を保つのに、目が飛び出るほどのメンテナンス費用が掛かることも事実だ。しかし、それ以上の体験を生んでくれてきた。

とはいえ筆者も、すべてへ深く感情移入するわけではない。2009年式と古いフォルクスワーゲンのSUVも、家族との思い出が詰まった愛車だが、関係性は少しドライだ。

ランチア・デルタ・インテグラーレ・エボ・ジャッロ・フェラーリ(1992年式/欧州仕様)
ランチア・デルタ・インテグラーレ・エボ・ジャッロ・フェラーリ(1992年式/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

少ないリスクで、遠くを目指すことはできる。実際はしないが、サーキットを走らせることも躊躇しないだろう。人生の記憶を一緒に歩んでいるが、デルタとは違う。

もう一度デルタに乗りたいと願う

筆者は、ランチアをコレクティング・カーズという英国のオンライン・オークションで手放した。1週間の掲示時間を経て、落札額の全額が出品者へ振り込まれ、落札者は7.2%の手数料を管理者へ支払う。

まるで遺品整理するように、自分はデルタの書類を整えた。程なくして、ウォッチャーは600人を超えた。最低落札額は5万ポンド(約1020万円)に設定したが、入札終了が近づくにつれ上昇し、最終的に5万7500ポンド(約1173万円)で落札者が決まった。

ランチア・デルタ・インテグラーレ・エボ・ジャッロ・フェラーリと、筆者のリチャード・ウェバー
ランチア・デルタ・インテグラーレ・エボ・ジャッロ・フェラーリと、筆者のリチャード・ウェバー    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ランチアを引き渡す日が来た。運転する暇すらないから、そこまで悲しく思う暇もないだろう、と自分にいい聞かせて。デルタへもう一度乗りたいと、内心は強く願っている。でもしばらくは、フォルクスワーゲンのSUVを愛することにしよう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

デルタ・インテグラーレ・エボとの惜別の前後関係

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