【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#18 宇宙旅行並みのロマン!

公開 : 2025.09.12 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第18回は『宇宙旅行並みのロマン!』を語ります。

この程度じゃ生ぬるいぜ!

大貴族号こと、わが先代マセラティクアトロポルテは、無事、真夏の箱根遠征を乗り切った。

若き日の池沢早人師先生は、ディノ246GTで何度も箱根に遠征し、そのうち半分は故障で帰って来られなかったというが、それに比べたら大貴族号は、給油口の開きが悪いくらいで、エアコンビンビン状態で楽勝の帰還であった。

よし行くぞ、男鹿半島!
よし行くぞ、男鹿半島!    神村聖

私は急に強気になった。「この程度じゃ、ロマンとして生ぬるいぜ!」と。

実は私には、大貴族号の購入時点で、ひとつのプランがあった。それは、「コイツで男鹿半島まで往復する!」というものだ。もっと具体的には、秋田県の男鹿半島の北西端・入道崎まで走り、日本海に沈む夕日を眺めるのである。

なぜ男鹿半島の入道崎かと言えば、そこがロマンに満ち溢れた絶景ポイントだからだ。これまで3回くらい訪れているが、何度行っても本当に素晴らしい。そして、何度行っても本当に人がいない。まったくもって閑散としている。

こんな絶景ポイントなのに、なんで誰もいないの!? なんでみんな京都とか富士山とか、そんな人込みだらけの場所ばっかり行くの? バカじゃないの!?

俺は3回も行ったのに!

その点、男鹿半島の入道崎はウルトラ素晴らしい。だいたい、人に男鹿半島と言っても「それどこだっけ?」と聞き返される。ましてや入道崎なんて誰も知らない。俺は3回も行ったのに!

世界でも指折りに信頼性の低いクルマで、ほとんど誰にも知られていない絶景ポイントまで走る。これ以上自動車ラスト・ロマンにふさわしい旅はないだろう。

弊社(編集プロダクション)スタッフである安ド二等兵。
弊社(編集プロダクション)スタッフである安ド二等兵。    フォッケウルフ

しかも、都内から秋田はそこそこ遠い。箱根に行く途中で故障しても、車両保険でローダー呼んで帰ってくりゃ楽勝だが、秋田となるとそうも行かない。

おそらく秋田県内には、先代マセラティ・クアトロポルテを修理できるガレージは、一軒もないだろう(あったらすみません)。

つまり、大貴族号での男鹿半島遠征は、宇宙旅行(弾道飛行系)のようなものである。うおおおお! 考えただけで、ロマンで胸がいっぱいになる!

よし行くぞ、男鹿半島!

男鹿半島に行くとは決めたものの、ひとりじゃあまりにも心細い。ひとりぼっちの立ち往生はイヤ! そこで、弊社(編集プロダクション)スタッフである安ド二等兵を同道させることにした。

安ド「大貴族号で秋田に行くんスか? 日帰りですか?」

安ドはあまり気乗りしない様子だ。彼は『ベストカー』誌のバイト時代、岩手あたりまでしょっちゅう日帰り取材させられていたので、そういうスパルタ系のドライブ旅だと思ったらしい。

「一泊だよ」というと、「じゃ楽勝ですね!」と乗り気になった。もちろん、片道特攻になる可能性もあるわけだが。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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