低価格のコンパクトカー復権? プジョー『108』後継車登場か 欧州に新規制導入で復活の可能性

公開 : 2025.12.02 07:45

プジョーのAセグメント車『108』の後継車が近い将来に登場する可能性があります。欧州で検討が進められている新カテゴリー「Eカー」が実現すれば、小型で安価なクルマが復活すると期待されています。

欧州で必要とされる「手頃」なクルマ

欧州連合(EU)が構想している新規格「Eカー(E-car)」カテゴリーが実現すれば、縮小傾向にある小型車の再興につながると期待されており、プジョー『108』のような安価なAセクメント車が登場する可能性も高まる。

プジョーは約4年前、トヨタ・アイゴやシトロエンC1の兄弟車である108の販売を終了し、それ以来、ワンクラス上のBセグメント車『208』が同社のエントリーモデルとなっている。

プジョー108
プジョー108

1991年の『106』から30年間にわたる小型車生産の歴史は、108とともに幕を閉じた。Aセグメント車は欧州の規制強化と生産コスト増で採算が合わなくなり、シトロエンC1、フォードKa、ヴォグゾール・ビバ、スコダシティゴなどの競合車もほぼ同時期に撤退した。

しかし現在、プジョーのアラン・ファヴェCEOは、EUで新たな小型車規格の枠組みが制定され、メーカーが利益を確保できる環境が整えば、Aセグメントへ復帰する可能性があると示唆している。

AUTOCARのインタビューで、将来的に208より小型のモデルを開発する可能性について問われたファヴェ氏は、「過去に108、107、106がありました。つい最近までAセグメントで100万台以上を販売してきました。もし、小型車で利益を出せる新たなカテゴリーが生まれるなら、過去と同じように当然プジョーにも活躍の場があるでしょう」と語った。

ファヴェ氏が言及したのは、EUが導入を検討しているEカー・カテゴリーだ。108のような小型で手頃な価格のモデルの普及を促す狙いがある。詳細は未確定だが、法規制や義務化技術の適用範囲を縮小することで生産コストを軽減し、低価格でも採算が取れる利益率を目指す。

この動きは、手頃な小型車の新時代の到来を予感させるものとして業界各社から歓迎されている。ルノー・グループ傘下のダチアや中国のBYDといったメーカーは、欧州市場へ小型のエントリーモデルを投入する計画があることを示唆している。

小型車に厳しい現在の規制環境

プジョーの兄弟ブランドであるシトロエンも、規制環境の改善による2CVの後継車開発に期待感を示している。

しかし、利益を確保できる新たな規制枠組みが整わない限り、プジョーがAセグメント市場に再参入する可能性はないと、ファヴェ氏は強調した。

プジョー106
プジョー106

「枠組みが整わない限り、前任者(元プジョーCEOのリンダ・ジャクソン氏)の方針に従います。『現状ではAセグメント車の参入余地はない。どのメーカーも基本的には同じ理由で同セグメントから撤退している。低価格帯のクルマに大量の装備を搭載せざるを得ない状況では、採算が取れない』というものです」

ファヴェ氏はEUの義務化技術や安全規制の重要性を認めつつも、超低価格車の販売とは両立できないと述べた。

「安全装備や運転支援システムは、もちろん理にかなったものです。しかし、それらには費用を払う必要があることを明確にしなければなりません。人々に支払う意思がある限りは問題ありませんが、それでは欧州市場がコロナ以前より300万台(年間販売台数)も縮小している理由に誰もが疑問を抱くはずです」

「クルマの価格を押し上げる装備を付け続けなければならないのであれば、いつかクルマが高くなりすぎて買えなくなる日が来ます。それらはすべて理にかなっているのか? それとも、例えば低価格車のような特定の市場セグメント向けに、もっと良い製品を生み出すための条件を設ける方法はないのか? 今こそ自問すべきです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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