シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(1) エンジン&シャシー共有の小さなお宝

公開 : 2025.05.11 09:45

1990年代に登場した、若者も選べる小柄で安価なフレンチ・ホットハッチ エンジンとシャシーは共有 鋭く回る1.6L 4気筒 不意を突かれるように積極的な回頭性 UK編集部が懐かしの2台へ試乗

若者も選べる小柄で安価なフレンチ

1990年代の欧州は、必ずしもクルマ好きにとって望ましい時代とは限らなかった。1980年代に大幅な成長を見せたホットハッチは、人気の上昇とともに自動車盗難の対象に。そこへ事故率の高さも重なり、任意保険料は高騰した。

フォルクスワーゲン・ゴルフ GTIは3代目へ代替わりを果たすものの、パワーダウン。フォード・エスコート・コスワースも、当初のような輝きは失っていた。

シルバーのシトロエン・サクソ VTSと、イエローのプジョー106 GTi
シルバーのシトロエン・サクソ VTSと、イエローのプジョー106 GTi    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

憂うグレートブリテン島へ救いの手を差し伸べたのは、フランスのメーカーだった。小柄・安価で、若者が賄える維持費で乗れるモデルがリリースされた。シトロエン・サクソ VTSと、プジョー106 GTiの2台だ。

今では信じられないが、シトロエンはサクソ VTSの任意保険を無料で付帯するサービスを展開。お手頃な価格設定と相まって、ホットハッチのベストセラーへ躍り出ている。106 GTiは割安感で及ばなかったが、対立候補として支持を集めた。

1.6L 4気筒エンジンを共有 普通のシャシー

この2台は、実は1587ccの自然吸気4気筒エンジンと、前輪駆動シャシーを共有していた。しかし動力性能では、0-100km/h加速を7.7秒でこなす、サクソ VTSの方が勝った。106 GTiは、8.2秒がうたわれていた。

この差が生まれた理由は、今でも明らかではない。馬力やトルク、トランスミッションは同じだった。サクソ VTSは、2速で引っ張って計測したから、という憶測はある。保険料を抑えるため、プジョーはウエイトを積んでいたという噂も当初から流れていた。

シルバーのシトロエン・サクソ VTSと、イエローのプジョー106 GTi
シルバーのシトロエン・サクソ VTSと、イエローのプジョー106 GTi    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

そんな謎もはらむ2台だが、クルマとしての構成は実にシンプル。16バルブの4気筒エンジンは121psを発揮し、ショートレシオの5速MTを介して前輪を駆動した。複雑な電子制御技術や、高度なディファレンシャルは、もちろん搭載していない。

サスペンションは、通常のモデルと同じく、前がマクファーソンストラット式のコイルで、後ろがトレーリングアーム式のトーションバー。至って普通のスタイルといえた。

かなり珍しい良好なオリジナル状態

スタイリングの差別化も限定的だった。広げられたトレッドに対応するオーバーフェンダーや、ボンネットのパワーバルジにエアインテーク、エアロキットといったアイテムは、ほぼ与えられていなかった。

アルミホイールは14インチ。血気盛んな若者の手で、容赦なくインチアップされたことはいうまでもない。結果として、2025年にオリジナル状態の車両を見つけることは簡単ではない。サビの少ない個体は、更に限られる。

プジョー106 GTi(1999年式/英国仕様)
プジョー106 GTi(1999年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

今回手配した2台は、グレートブリテン島に存在する最高コンディションの部類に入るはず。オーナーも、お宝として大切にしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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