BYDの軽EV、新規制導入で欧州進出の可能性あり 新型『ラッコ』がグローバル展開へ?

公開 : 2025.11.21 07:45

BYDの軽自動車『ラッコ』は、欧州の新しい『Eカー』カテゴリーが創設されれば同市場に進出する可能性があります。ただし、現在はハイブリッド車のラインナップ拡大に注力しているため、優先課題ではないようです。

軽自動車の「黒船」?

欧州連合(EU)が現在検討中の小型車カテゴリー『Eカー(E-car)』カテゴリーが実現すれば、BYDは軽自動車『ラッコ』を欧州に投入する可能性がある。

BYDは先月のジャパンモビリティショー2025でラッコを発表し、ホンダスズキダイハツ日産三菱など国内メーカーがほぼ独占する軽自動車市場への進出を表明した。

ジャパンモビリティショーで公開されたBYDラッコ
ジャパンモビリティショーで公開されたBYDラッコ

日本の軽自動車規格に適合するよう設計・開発されたラッコは、現在は日本国内のみでの販売が予定されている。全長3.4m、全幅1.475m、全高1.8mで、他の競合車と同様に箱形で直線的なプロポーションを持つ。

20kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は約180kmになると言われている。充電速度は最大100kW。フロントに配置されたシングルモーターを駆動するが、その出力は未公表だ。

日本における自動車販売の約3分の1を占める軽自動車セグメントに海外メーカーが参入するのは、歴史的にも異例のことだ。BYDは2022年の日本進出以来、累計販売台数が7000台に満たないの。しかし、英国では2025年9月単月だけで1万1000台を販売している。

激戦区の軽自動車市場攻略がBYDの日本市場における成功の鍵となるか否か、多くの注目が集まっている。

欧州にも活路を見出すか

しかし、今回、同社副社長のステラ・リー氏はAUTOCARに対し、ラッコが最終的にはグローバルで重要な役割を果たす可能性を示唆した。

「日本ではすでに軽自動車を投入しており、EUの規制の動向には強い関心を持っています。参入余地があれば、欧州にも投入できます」とリー氏は述べた。

ジャパンモビリティショーで公開されたBYDラッコ
ジャパンモビリティショーで公開されたBYDラッコ

リー氏が言及したEUの規制とは、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が最近、欧州メーカーと協力して創設を目指しているEカー・カテゴリーのことだ。「小型で手頃な価格の次世代車」の導入を推進する取り組みの一環である。

この動きは、新規制や安全装備義務化の相次ぐ導入により小型車の生産コストが上昇し、欧州市民の大半が新車購入から遠ざかっているという、各メーカーの主張に対応したものだ。

Eカー・カテゴリー(Eは「欧州」、「環境」、「経済」を意味する)の内容詳細は未確定だが、この枠組みは小型低価格車の普及に向けた重要な一歩と広く見られており、日本の軽自動車規格に例えられることもある。

ルーマニアのダチアは最近、軽自動車風のコンセプトカー『ヒップスター』を公開した。Eカー創設後に考えられる新型車のビジョンを示すもので、最終的には1万5000ポンド(約300万円)未満で販売される可能性がある。

ホンダは来年、英国で『スーパーワン』を発売する予定だ。これは軽EV『N-ONE e:』を改良したモデルだが、欧州全域での販売計画についてはまだ確認されていない。

BYDが欧州市場にラッコを投入できると判断した場合、『ドルフィンサーフ』の下位に位置する新たなエントリーレベルEVとして位置づけるだろう。

しかし、リー氏は、欧州におけるラッコの発売は「当面の課題ではない」とした。BYDは欧州でのEV需要減退を受け、全セグメントにおけるハイブリッド車のラインナップ拡大に多額の投資を行っているためだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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