2025年に通用する30年前の面白さ シトロエン・サクソ VTS x プジョー106 GTi(2)

公開 : 2025.05.11 09:46

1990年代に登場した、若者も選べる小柄で安価なフレンチ・ホットハッチ エンジンとシャシーは共有 鋭く回る1.6L 4気筒 不意を突かれるように積極的な回頭性 UK編集部が懐かしの2台へ試乗

大きく異なるホットハッチの運転体験

エンジンやシャシーを共有する、シトロエン・サクソ VTSとプジョー106 GTi。しかし、運転体験は大きく異なる。前者は、より機敏で刺激的。後者は、より大人で許容範囲が広い。それでも、どちらも巨大な喜びを提供してくれる。

軽量なボディに鋭く回る自然吸気エンジンと、すこぶる敏捷なシャシー。興奮した小動物のように、驚くほどのエネルギッシュさでサーキットを駆け回れる。ちなみに、新車時の標準タイヤは、106 GTiの方がハイグリップだった。

シトロエン・サクソ VTS(1997年式/英国仕様)
シトロエン・サクソ VTS(1997年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

歴代のオーナーは、アクセルオフの荷重移動でリアタイヤが浮きかける、リフトオフ・オーバーステアに肝を冷やしてきたかもしれない。かくして、30年を経た2025年の印象はどんなものだろう。

鋭く回る4気筒 スズメバチのように鋭敏

2台に共通するのは、背筋を正したような運転姿勢と、オフセットし窮屈に並んだ3枚のペダル。アクセルは小さいが、反応は正確で、ヒール&トゥでシフトダウンしやすい。ステアリングホイールは握りやすく、イエーガー社製のメーターは見やすい。

インテリアが現代的な方は、サクソ VTS。106 GTiのダッシュボードには、10年前と同じ部品が散りばめられている。ベースモデルの登場が1991年と、サクソより5年も早かったことが影響しているのだろう。

プジョー106 GTi(1999年式/英国仕様)
プジョー106 GTi(1999年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

106 GTiの4気筒エンジンは、硬質なサウンドを放出しながら鋭く回る。身のこなしは、スズメバチのように鋭敏。ステアリングはハッとするほどクイックで、手のひらへ伝わる感触も豊かだ。四本のタイヤのグリップ力が、絶妙にバランスしている。

最大トルクは14.7kg-mでしかないが、車重は961kg。期待以上の瞬発力を披露する。シフトレバーの感触には、若干の引っ掛かりがあるものの、爽快で気持ち良い。今でも現役と呼べる、速さがある。

不意を突かれるように積極的な回頭性

サクソ VTSは、更に敏捷。積極的なコーナリングは、不意を突かれるよう。アクセルペダルを僅かに戻すと、リアの荷重は明確に軽くなる。更にきっかけを与えれば、テールが流れ出す。もし路面が濡れていたら、暴れっぽい挙動に感じられたかもしれない。

反面、中毒性は一層強い。ステアリングホイールを握っていると、つい攻めたくなる。今回の車両のエンジンはリビルド直後で、5000rpm以下という制限付きだったが、加速力はかなり情熱的。シフトレバーの感触も滑らか。洗練された印象を伴う。

シルバーのシトロエン・サクソ VTSと、イエローのプジョー106 GTi
シルバーのシトロエン・サクソ VTSと、イエローのプジョー106 GTi    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

どちらも、小さく軽いクルマのメリットを思い切り実感できる。タイヤは14インチの185/55で、乗り心地にも感心する。全幅が狭いから、アスファルトの剥がれた穴もスイスイ避けられる。

反面、110km/h巡航時の回転数は、3000rpm。高速道路での旅行には、多少の我慢が必要かもしれない。雨天時や冬場には、進行するサビにも気は抜けない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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