フィオラノには速すぎる フェラーリF80(1) 499Pと深い関係の1200ps技術へ迫る

公開 : 2025.07.14 19:05

499Pとの関係が深い、10年に1度の特別なF80 カーボン製シェルで799台限定 3.0L V6に3モーターで1200ps ピッチとロールを見事に抑制 圧倒的パフォーマンスに心打たれる UK編集部が試乗

ル・マン優勝の499Pと技術的な関係が深い

フェラーリは10年に1度、特別な1台を発表する。288 GTOにF40F50エンツォ・フェラーリ、ラ・フェラーリと遡れる、その系譜上にあるのがF80だ。デモンストレーションに、フィオラノ・サーキットは選ばれなかった。速すぎるから。

発表場所となったのは、イタリア半島北東部、サンマリノにほど近いミザーノ・サーキット。筆者が予習で見たアウディR8 GT3の映像では、英国のシルバーストン・サーキットと同等の広さに思えた。ところが、ここも狭く感じられるほどだった。

フェラーリF80(欧州仕様)
フェラーリF80(欧州仕様)

AUTOCARの読者ならご存知かもしれないが、F80の開発は2025年のル・マン24時間レースで優勝を飾った、499Pと並行して進められた。技術的な関係性も、かなり深い。

ボディは全長が4840mm、全幅は2060mm、全高は1140mm。ホイールはカーボンファイバー製が標準で、鍛造アルミも選べる。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2か、2Rを選択可能。サイズは前が285/30 R20、後ろが345/30 R21だ。

キャビン部分はカーボン製シェル

カーボン製シェルでキャビン部分は構成され、ラ・フェラーリより単体での重さは5%軽く、剛性は50%高く、幅は50mm狭い。そのシェルの前後に、押出成形アルミ製のサブフレームが組まれる。

サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式。同社プロサングエの技術を応用した、アクティブ・マルチマティック・コイルオーバーダンパーが、水平にマウントされる。アッパーウイッシュボーンは、3Dプリンターで整形されたものだという。

フェラーリF80(欧州仕様)
フェラーリF80(欧州仕様)

ダンパーは減衰力が可変するだけでなく、前後のピッチや左右のロールも抑制。アンチロールバーを不要としている。ブレーキディスクは新開発のカーボンセラミックで、ディスク直径は前が408mm、後ろが309mm。ホイールベースは2670mmとなる。

3.0L V6は499Pと共有 3モーターで1201ps

エンジンはバンク角120度の3.0L V型6気筒で、499Pにも載るもの。だがチューニングが異なり、最高出力は900ps/8750rpm。バンク内側へ位置する2基のターボには、電気モーターが内蔵され、回転数を問わずブースト圧が保たれる。

クランクシャフトには81psの駆動用モーターが組まれ、8速デュアルクラッチATへ繋がる。フロント側には、143psのモーターを2基搭載。総合での最高出力は1200psに達する。エンジン頂部が膝の位置程度と、低く抑えられていることも特徴だろう。

フェラーリF80(欧州仕様)
フェラーリF80(欧州仕様)

空力も抜かりなく、3枚のフィンでフロントの気流を調整。上下へ空気を割り振り、長さ1.8mもあるリアのディフューザーと、200mm上下し22度まで傾くリアウィングへ導かれる。ダウンフォースは、249km/h時で1050kgに達するという。

前後アクスルには、ブレーキ制御のトルクベクタリング機能を実装し、電子制御式リミテッドスリップ・デフも備わる。回生ブレーキは、計3基のモーターで対応。これらを統合し自然に制御するには、想像を絶するほど複雑なソフトウエアが必要になるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリF80の前後関係

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