クルマを軽量化する鍵はシートにあり BMW最新コンセプト『Mビジョナリー・マテリアル』の先進的な構造とは

公開 : 2026.01.05 07:05

クルマの軽量化で重要なのは、ボディ構造だけではありません。BMW Mは意外と重い自動車用シートの軽量化に力を入れ、先進的な素材や生産技術を構想しています。この記事では最新のシート構造について紹介します。

意外と重い自動車用シート

軽量化を追求するうえで、クルマの構造の中で比較的注目されていないのがシートだ。

ドライバーや乗員は、快適性以外ではシートのことをあまり気にしていないかもしれない。しかし、一度でもクルマのシートを外したことがある人なら、その複雑な造りと重さを知っているはずだ。シートメーカーは軽量スチールやアルミニウムを採用しているが、近い将来、さらに高度な軽量構造や持続可能素材の活用が進むかもしれない。

BMWの『Mビジョナリー・マテリアル』シート
BMWの『Mビジョナリー・マテリアル』シート    BMW

例えば、BMWは『Mビジョナリー・マテリアル』シートを発表した。再生素材や植物由来原料、バイオベースのレザー素材の活用を模索するものだ。これについては後述する。

外観からは想像しづらいが、自動車用シートの内部には複雑な構造体、電気系統、暖房・換気装置、時にはエアバッグのような安全関連技術が収められている。

一般的なシートは、座面用フレームと背もたれ用フレームで構成される。軽量でありながら衝突に耐える強度を持ち、可能な限りスペースを取らず、かつ快適でなければならない。当然ながらコストも常に考慮される。

シート構造用の特殊軽量鋼材を供給しているドイツのティッセンクルップ(Thyssenkrupp)社によれば、平均的なフロントシートのスチール製フレームだけで12.5kgの重量があり、フロントとリアシートを合わせると約50kgに達するという。

ティッセンクルップは自社の軽量鋼材を使用することで、非軽量素材と比較して15%の軽量化が可能だと述べている。

従来と異なる先進的な構造

さらに、座面と背もたれのフォーム、ヘッドレスト、ランバーサポート調整、リクライニング機構、高さ調整、場合によっては暖房や空調機能も加わるため、シートはかなりの重量物となる。

過去にはトヨタが3Dプリントのシート構造を試験的に導入したほか、2021年にはポルシェが3Dプリント技術を用いたフルバケットシートを開発した。

BMWの『Mビジョナリー・マテリアル』シート
BMWの『Mビジョナリー・マテリアル』シート    BMW

2017年には、ドイツのブラウンシュヴァイク芸術大学の学生がアウディと共同で『コンセプト・ブリーズ』を制作した。3Dプリントによる生分解性プラスチック製の骨格構造に、38個のアクティブクッションを装着したものだ。

さて、BMWのシートはまったく異なるアプローチを採っている。構造は、ルクセンブルクに本拠を置く専門企業グラデル・ライトウェイト(Gradel Light Weight)のロボットによるフィラメントワインディング(FW)という技術で成形される。要所に設置されたボビンに、樹脂を混ぜた糸状のフィラメントをロボットで巻き付けていくのだ。

グラデル社によれば、この構造は従来素材と同等の強度を持ちながら60%軽量だという。BMWは、これを軽量シート開発における「触媒(catalyst)」と位置付け、従来の構造が完全に不要になると説明している。

部品点数の削減により軽量化を実現した上、シートのデザインも非常にクールに仕上がっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    役職:技術編集者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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