ポルシェ、廃棄物を高級素材へ変える新プロジェクト実施 自動車リサイクルの「難関」を突破

公開 : 2026.01.06 17:05

ポルシェは自動車リサイクルで難点とされてきた「自動車破砕残渣(ASR)」のリサイクル実証に成功しました。このプロジェクトでは廃車から発生した複雑なASRを、新品のステアリングホイール製造に活用しています。

複雑な自動車破砕残渣(ASR)をリサイクル

ポルシェは歴史的にエキサイティングな高性能車を数多く生み出してきたが、その裏ではエンジニアリングの専門知識を駆使し、優れたリサイクル方法の実現にも取り組んでいる。

ドイツの化学大手『BASF SE』および技術パートナー『BEST』(バイオエネルギー・サステナブル・テクノロジーズ)と協力し、ポルシェは最近、廃車から発生する厄介な混合廃棄物を、新たな高品質部品に利用できる形態へリサイクルするというプロジェクトを完了した。

ポルシェは今回の実証プロジェクトでASRをリサイクルし、ステアリングホイールの製造に利用した。
ポルシェは今回の実証プロジェクトでASRをリサイクルし、ステアリングホイールの製造に利用した。

自動車リサイクルにおける難点の1つは、金属類をすべて除去した後に残る細かい廃棄物の処理だ。個々の部品に分解した後、比較的容易にリサイクルできるものもあるが、残ったものはシュレッダーにかけられ、自動車破砕残渣(ASR)が生成される。

これには繊維、ガラス、発泡体、プラスチック、粉塵や汚れ、フィルム、塗料粒子などが含まれる。これまでASRは、焼却による熱エネルギーで処分されることが多かったが、理想は再利用可能なものへとリサイクルすることだ。

ガス化技術でステアリングホイールへ生まれ変わる

ASRは複雑な混合物であるため、鋼鉄やアルミニウムのように単純に溶解して再利用することはできない。しかし、ガス化(gasification)処理によってガスに変換することが可能だ。ガス化の技術は数百年前から存在し、石炭から都市ガス・合成燃料・化学薬品などを製造するために利用されてきた。

ASRにおいては、対象物を通常700度以上に加熱し、酸素がほとんど存在しない状態で合成ガス(syngas)を生成する。合成ガスは熱源として利用したり、合成液体燃料製造の足掛かりにしたりすることができるが、今回BASFはこれをポリウレタン製造に活用している。

ガス化によって得られる原料は従来品と変わらない品質だという。
ガス化によって得られる原料は従来品と変わらない品質だという。

ポルシェによれば、ガス化によって得られる原料は従来の一次原料と同等の品質であり、今回の実証プロジェクトでは発泡体を新品のステアリングホイールの製造に活用したという。目標は、これまでの焼却処分に代わる手段として、このガス化処理の活用を広げることだ。

このリサイクル方法には、技術的、経済的、あるいは生態学的な理由でリサイクルできないプラスチック廃棄物を、高品質な部品の製造に活用できるという利点がある。

リサイクルで得られた二次原料は、化石由来の一次原料と混合されることが多い。そのため、リサイクルは本当に効果があるのか、あるとすればどの程度なのか、という疑問を抱く人もいるだろう。その答えはマスバランス方式(物質収支方式)で導き出すことができる。マスバランス方式とは基本的に、調達から加工、製造に至るサプライチェーンの各段階を第三者が追跡し、製品に含まれる持続可能な材料の割合を認証するシステムである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェシ・クロス

    Jesse Crosse

    役職:技術編集者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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