トヨタGR GT3で目指すもの セナ、シューマッハ、佐藤琢磨を輩出した登竜門 マカオGP取材記(中編)【不定期連載:大谷達也のどこにも書いていない話 #3】

公開 : 2026.01.21 11:45

GRはどのような姿勢で臨んだのか

そうした施策がスポーツカーとしてのポテンシャルを向上させるのに役立つことは間違いないが、前述のとおり、BoPに縛られるGT3車両はそれだけではレースに勝てない。

何しろ、エンジン性能が他を圧倒していると判断されればエアリストリクターの装着が義務づけられたり、ターボの過給圧を細かく規制されるほか、シャシー性能が優れていると見なされれば最低車重を引き上げたり空力性能に足かせをはめられるのがBoPだ。

GR GTはトヨタ初となるオールアルミニウム骨格を採用。
GR GTはトヨタ初となるオールアルミニウム骨格を採用。    大谷達也

すなわち、どんなに高性能なスポーツカーを作ったところで、それがそのままGT3車両のアドバンテージにはつながらないところが、GT3規則の難しさであるといってもいいだろう。

こうした状況に対して、GRはどのような姿勢で臨んだのか。

東京オートサロン2026の会場で取材したGRの技術者によれば、BoPによってピークパフォーマンスが制限されるのはやむを得ないものの、ピークパフォーマンスを発生する領域から離れた領域でもパフォーマンスの低下を防ぐことで、BoPの影響を最小限に留める考えだという。

さらにいえば、ピークパフォーマンス周辺の性能低下を小さくすれば、ジェントルマンドライバーにとっての扱い易さにつながることも開発陣の狙いだった模様。また、GT3車両でしばしば行われる、エボリューションモデル投入についてもできるだけ控える方針だと語った。

メルセデスAMGが採用し、GRが追従する戦略

エボリューションモデルはパフォーマンス向上に役立つ一方で、チームにとっては車両の買い換えを意味し、多大な経済的負担を要する。これと同じ方針はメルセデスAMGも長年採用してきたが、その結果、彼らはGT3市場でもっとも多くのシェアを獲得することとなった。

そして、多くのチームから選ばれればレースで勝つチャンスが増えるのは自明のこと。また、無闇にエボリューションモデルを投入してもBoPによってパフォーマンス向上は水泡に帰する可能性があるのだから、メルセデスAMGが採用し、GRが追従しようとしている戦略は実に理に適ったものといえるだろう。

東京オートサロン2025で展示された『GR GT3』。
東京オートサロン2025で展示された『GR GT3』。    大谷達也

いずれにせよ、GT3レースで勝利を積み重ねれば、そのブランドの知名度やバリューが向上するのは間違いのないところ。そのためにも、ランボルギーニが、そしてGRがGT3レースで成功を収めようとするのは当然のことと言えよう。

(後編に続きます。1月22日木曜日昼頃公開予定です)

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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