キット価格はカレラ1台分 ポルシェ911 GT3 RS マンタイ(2) 違いが見えるコーナリング シルバーストン2秒短縮

公開 : 2026.03.06 18:10

世界屈指にアグレッシブなオプション、911 GT3 RSの「マンタイ・キット」 無数の空力アイテムで見事な変貌 280km/hで1.0t以上のダウンフォース シルバーストンでUK編集部が効果へ迫る

マンタイの能力をシルバーストンで確認

歴代で初めて、ポルシェの正式なオプションとなったマンタイ・キット。1.0t以上といわれるダウンフォースと、レーシングチームが施した各部へのチューニングを、シルバーストン・サーキットで確かめる時がやって来た。

2024年11月に、筆者は通常のポルシェ911 GT3 RSで、同コースを周回している。空力が生む可能性と、複雑で高度なPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)システムの効果を、つぶさに体験している。

ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)
ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

その時に残した、グランプリレイアウトでのベストタイムは2分13秒10だった。ブレーキングは、何かへ引っ張られるように強烈で、コーナリングは狂気じみたほど猛烈。最大の旋回Gは1.8。ナンバー付き車両として、桁外れの旋回性能といえた。

それから1年が過ぎたが、12度という気温と、軽く路面が濡れた条件は同じ。午後にはドライになったことも。筆者のリクエスト通り、試乗車は標準仕様と同じ、「R」の付かないミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤを履いている。

切れ込むように食らい付く能力へ息を呑む

走り出してすぐ、指先へ伝わる感触の違いへ気付く。紙やすりの番手が、120から80へ荒くなったかのように情報が濃い。手のひらや両脚へ伝わる、フィードバックの繊細さに驚かされる。ボールジョイントで結ばれる、サスペンション・アームがきしむ。

後方には、ロールケージと巨大なシャークフィン、ウイング。ミラーを覗いても、見えるのは暗闇だけ。乗り心地は硬く、公道との相性は通常のGT3 RSが遥かに勝るだろう。

ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)
ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

しかし、マンタイ・キットの目指すところはサーキット。気質はより荒く、神経質。きつい低速コーナーへ、切れ込むように食らい付く能力へ息を呑む。

独自のブレーキラインに、一層低められた車高が相まって、高速コーナー手前のブレーキングを遅らせようと思わせる。グリップの限界へ挑みたくなる。

レーシングカーをナンバー付きにした感じ

実のところ、数本のストレートと高速コーナーが連続するサーキットでも、自分のスキルでは、探れた変化は限られたといえる。ブレーキを引きずりコーナーへ飛び込み、テールの荷重を抑えつつ、颯爽と旋回していく様は、GT3 RSならではの特殊能力だ。

それでもマンタイ仕様の方が、大胆に振り回せる。僅かだが、抱ける自信も深い。通常のGT3 RSは、例えるなら強力なロードカーの延長にあるが、こちらはレーシングカーをナンバー付きにした感じ。最終的なベストタイムは、2分11秒15だった。

ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)
ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

テレメトリー・データを確かめると、高速コーナー出口での加速が早く、S字コーナーの通過速度が高い。コーナー頂点へ向けて、積極的に導けていることがわかる。

グリップが危うくなる高速域で、タイヤは僅かに長く路面を保持する。チャレンジングな運転への意欲を、掻き立てるように。他方、グリップの限界付近で操るプロドライバーは、増えたダウンフォースのアドバンテージを最大限に引き出せるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポルシェ911 GT3 RS マンタイの前後関係

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