GT3 RS凌駕の馬力重量 ポルシェ911 バイ・セオン・デザイン 失われる964を救う

公開 : 2025.09.09 19:05

911のレストモッドを手掛けるセオン・デザイン 同社の過去最強で最軽量 馬力重量は992型の911 GT3 RSを凌駕 クイックで即時的な操舵 何日続いてもいとわない聴覚体験 UK編集部が試乗

同社の過去最強で最軽量 提供は年間6台

数年前にも、セオン・デザイン社が手掛けたポルシェ911はご紹介している。だが、今回のモデルは、同社の過去最強で最軽量。自然吸気ながら、最高出力は427psに達し、車重は1150kgしかない。完成までに、1年半はかかるらしい。

同社は、英国に拠点を置くレストモッド・ガレージ。964型911をベースに、クラシカルなスタイリングを与え、エンジンをチューニングし、年間6台程度を仕上げている。

ポルシェ911 バイ・セオン・デザイン(北米仕様)
ポルシェ911 バイ・セオン・デザイン(北米仕様)

基本となる予算は、44万ポンド(約8712万円)。細部への気づかいや品質は、他社の追従を許さない。ご希望なら、予算を増やして一層特別な911にすることもできる。

オリジナルの964型が減ってしまうとお考えかもしれないが、余り心配しなくても大丈夫。通常は、徹底的にレストアが必要な車両がベースで、標準のままでは投じた金額を回収できるほどの価値は生まれない。むしろ、失われる964を救っているといえる。

馬力重量は992型911 GT3 RSを凌駕

美しいシルバー・ブルーの1台は、アメリカ・テキサス州出身のレーシングドライバーが依頼した車両。ボディはすべてカーボンファイバー製へ置き換えられ、リアに載る水平対向エンジンは4.0Lで、パワーウエイトレシオは992型の911 GT3 RSを凌駕する。

ボディシェルは丸裸にされ、ポルシェがレーシングカーで想定していた場所をシーム溶接。ボディパネルはシェルへ接着。ロールケージなしでも、剛性は通常より高いとか。

ポルシェ911 バイ・セオン・デザイン(北米仕様)
ポルシェ911 バイ・セオン・デザイン(北米仕様)

エンジンは3.6Lか3.8Lも選択可能。スーパーチャージャー付きも希望できる。この4.0Lの場合、専用スロットルボディに可変式排気バルブ、997 GT3用クランクシャフトが組まれ、最大トルクは45.5kg-mへ上昇している。

サスペンションは、アーム類は964のままワイドトレッド化。RS用のストラットブレースも備わる。ダンパーはトラクティブ社製で、減衰力は5段階に調整可能。スプリングは、2種類から選べるという。ワイヤーハーネスは30kgも軽い。

重量配分は46:54へ改善 上品で豪華な内装

ホイールは17か18インチ。後者なら、直径355mmのカーボンセラミック・ブレーキを組める。タイヤは、程よいグリップ力を狙いミシュラン・パイロットスポーツ4を履く。

燃料ポンプと補機バッテリー、エアコン、パワーステアリング・ポンプは前方へ実装され、前後の重量配分は46:54へ改善されている。実物は、期待以上にカッコいい。100万ドル(約1億5000万円)だと聞いても、納得できるように思えた。

ポルシェ911 バイ・セオン・デザイン(北米仕様)
ポルシェ911 バイ・セオン・デザイン(北米仕様)

車内は上品で豪華。ドアは、ガシンと閉まる音を残すべく、あえてスチール製のまま。
シートはカーボン製シェルだが、レザーで包まれている。ステアリングホイールは、固定式のディープディッシュ。ペダルの位置は、オーナーの体型へ最適化されている。

メーターは見やすい。ピラーは細くガラスエリアが大きく、964型の視界の良さへ改めて感心する。全幅は1796mmだから、傷んだ路肩へタイヤを載せる心配はない。乗り心地は硬めだが、オーナーはもっと硬いスプリングをご希望だとか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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