992.1とは違う没入感 ポルシェ911 GT3ツーリング 従来以上に鋭く回せるフラット6

公開 : 2025.08.19 19:05

992.2型でも選べるGT3のツーリング 最大トルク2.0kg-mダウン ファイナルレシオ8%短縮 従来以上に鋭く回せるエンジン 濃い充足感 秘めた能力を召喚できるのは高負荷時 UK編集部が試乗

992.2型でも選べるツーリング・パッケージ

恐らく、市中で見かける最新のポルシェ911 GT3は、多くがノーマル状態ではない。サーキット走行は前提でなくても、リセールバリューが視野に入っているなら、ヴァイザッハ・パッケージが選択されているはず。

それは、英国では1万9500ポンド(約386万円)のオプション。専用サスペンションにカーボンファイバー製のエアロキット、レーステックス素材のバケットシート、6点式ハーネス、GT3 RSと同じカーボン製ロールケージが装備されている。

ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2/英国仕様)

だが、そこまで仰々しい内容は必要ない、という人も存在する。そんな考えを想定したのが、ツーリング・パッケージ。リアウイングが省かれ、ラグジュアリーなインテリアが与えられる。無償で。アップデート後の992.2型でも、もちろん選べる。

ただし、今回試乗したオーク・グリーンの911 GT3ツーリングも、ノーマル状態ではなかった。ライトバウ(Leichtbau)と記された、小さなプレートがセンターコンソールに貼られている。2万9225ポンド(約579万円)の、軽量化オプションが載っていた。

トルク2.0kg-mダウン ファイナル8%短縮

ライトバウ・パッケージの内容は、9kg軽いマグネシウム製ホイールと、4kg軽いリチウムイオン補機バッテリー、カーボン製ルーフパネルの装備など。スタビライザーやサスペンション・アームなどもカーボン製で、ドアミラーは専用品だ。

試乗車には非搭載だったが、カーボンセラミック・ブレーキも選べば、1420kgまでダイエット可能。ここまで軽い公道仕様の911 GT3は、2012年以来とのこと。他方、ライトバウ仕様の背もたれを倒せるシートのおかげで、GT3としては初めて後席が備わる。

ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2/英国仕様)

992.2型のGT3は、メカニズム的には前期の992.1型と大きな違いはない。タイヤサイズは同じで、4.0L水平対向エンジンは9000rpmまで回り、最高出力は510ps。新しい触媒で、最大トルクは2.0kg-mダウンの45.8kg-mだが、無視できる差といえる。

その理由は、機械式LSDが組まれるMTでも、電子制御式LSDになるPDKでも、ファイナルレシオが8%縮まったから。サスペンションは、スプリングレートが見直され、ストロークも僅かに増えた。GT3 RS譲りの、アンチダイブ設計も得ている。

従来以上に鋭く回せるエンジン 濃い充足感

公道へ出てみると、992.2は大きく違う。ショートレシオ化の恩恵で、9000rpmまで従来以上に鋭く回せる。回転数に対する速度が僅かに落ちたことで、公道では一層扱いやすい。すこぶる速いが、恐ろしさは鎮められた。

パワーデリバリーはリニア。僅かに低下したトルクのおかげで、より濃い充足感へ浸れる。動的能力を引き出しやすく、手懐けやすく、パワートレインやシャシーを操ることへ没入できる。まるで、マツダMX-5(ロードスター)の様に。感動的な変化だ。

ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2/英国仕様)
ポルシェ911 GT3ツーリング(992.2/英国仕様)

サスペンションは、従来以上にしなやか。路面変化の影響を受けにくく、ボディへ強い衝撃が届くことは殆どない。うっかりアスファルトの状態を見誤っても、問題なし。動的能力を考えれば、乗り心地は快適だと表現できる。

ステアリングは想像以上に忠実で、ワダチなどの影響はほぼ受けない。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履くが、コミュニケーション力は若干低下したかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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