初代『TT』のエッセンスを未来へ アウディ新デザイナー独占インタビュー(前編) 清涼感あるシンプルなカタチに

公開 : 2026.03.04 17:05

ただ純粋にシンプルだった

黄金期とも言えるこの時代の洗練されたライン、滑らかな表面処理、控えめな装飾は、アウディ車に節度と繊細さを与えた。他の自動車メーカーがより派手な表現に傾く中、アウディはかえって際立つ存在となった。

「他とは大きく違っていましたが、ただ単に違いを追求していたわけではありません。極限の抑制をもって、他とは一線を画していたのです」

コンセプトCとフラセラ氏
コンセプトCとフラセラ氏    アウディ

「どうやって彼らは、これほどまでに革新的で、これほどまでに感情を揺さぶる、これほどまでに個性的なものを、ほとんど何も加えずに生み出したのでしょうか? せいぜい1本か2本のラインだけで、面取りもなく、内側と外側、凸と凹……ただ純粋にシンプルなのです」

「それが本当に、本当に心に響いたんです」

このテーマは今、かつてないほど重要になっている。競争が激化し、大きく揺らぐこの時代において、フラセラ氏はアウディ独自のアイデンティティを新たに確立しようとしているからだ。

アウディは、プレッシャーの強い環境の中で、鋭く冷たい空気のような清涼感をもたらす存在となるかもしれない。フラセラ氏は、アウディが落ち着きと繊細さの聖域となるのだと示唆している。

過去と現在をどう結び付けるか

フラセラ氏の課題の1つは、革新と認知をバランスよくまとめることだ。つまり、創業以来ブランドを定義してきた特性を損なうことなく、企業のビジュアルアイデンティティを完全にリセットするというものである。

「何をするにせよ、まず第一にアウディと認識されるものでなければなりません」

コンセプトCのエクステリア
コンセプトCのエクステリア

「アウディにはその価値、遺産、伝統があります。それを無駄にしてしまうのは惜しい」

コンセプトCは、過去と現在の難しい調和の実現に向けた指針となる。

チタンカラーがその一例だ。この色は「シルバーのアウトウニオンの系譜を継承する」ものとされ、将来のラインナップにおける「トレードマーク」カラーとして提案されている。同様に、新設計の縦長グリルも特徴的だ。グランプリレーサー『タイプC』に着想を得たこのデザインは、過去20年間すべてのアウディに採用されてきた「シングルフレーム」からの根本的な転換を意味する。

インテリアも現行モデルとは対照的で、建築的でクリーンな表面処理が特徴だ。ミニマルで機能的な雰囲気を醸し出している。

デジタル機器は控えめに

特筆すべきは、巨大なタッチスクリーンの不在だ。コンセプトCのインフォテインメント・システムは、比較的小さなデバイスで操作する。不要時にはダッシュボードに控えめに収納される仕様だ。これも、無駄を削ぎ落としながら前へ進むというフラセラ氏の姿勢を示す一例である。

「繰り返しますが、重要なのは時代との適合性です」と彼は説明する。デジタル機器への依存度を下げたことも、この合理的な考え方に基づいているという。必要のないものは、なくてもいいのだ。

コンセプトCのインテリア
コンセプトCのインテリア    アウディ

大型スクリーンは今や当たり前の装備だが、フラセラ氏はそうした現代の風潮に疑問を呈している。

「多くの場合、技術は技術そのものを誇示するため、あるいはブランドや製品としての『技術的』イメージを演出するためだけに用いられ、顧客体験における真の価値やメリットは必ずしも伴うわけではありません」

アウディ最新の上級モデルでは巨大なトリプルスクリーンを選択できるが、次世代のダッシュボードは完全に逆の方向性になる。

「技術はサービスとして存在すべきで、常に目につく場所にあったり、押しつけがましいものであったりしてはいけません。デジタル執事のように控えめでなければならないのです」

これはデジタル中心の未来志向という現在の主流に逆らう、革新的な考え方だ。

(翻訳者注:この記事は「後編」へ続きます。)

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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