アウディ新デザイナー独占インタビュー(後編) 「らしさ」を作る難しさ 過去の功績とどう向き合う?

公開 : 2026.03.04 17:25

アウディのデザイン責任者に就任したマッシモ・フラセラ氏が、AUTOCARの独占インタビューに応じました。初代『TT』に強い影響を受け、豊富なキャリアを築いてきた彼は新時代をどう形作っていくのでしょうか。

レトロ路線は危険な賭け

もしアウディが過去に目を向けるのであれば、ルノーヒョンデフォルクスワーゲンなどのようにレトロ路線を歩むことになるのだろうか?

マッシモ・フラセラ氏は、アウディの過去の成功を振り返り、新型車の個性を醸成するのに役立てようとしているのだろうか?

マッシモ・フラセラ氏は初代TTに大きな影響を受けた。
マッシモ・フラセラ氏は初代TTに大きな影響を受けた。

いや、違う。その理由は2つある。第1に、コンセプトCは単なる「TTの復活」ではなく、「独自性を追求するという強いメッセージ」であること。第2に、フラセラ氏は、過度なノスタルジックデザインはアウディのショールームにふさわしくないと考えていることだ。

「レトロは、特定のブランドや製品では機能する古典的な手法ですが、長期戦略にはなりません」

「過去に、バックミラーばかり見ていたブランドは数多い。一時的には通用するかもしれませんが、危険な賭けです」

コンセプトCが新時代の象徴に

したがって、コンセプトCには過去の名車に敬意を表した部分もあるとはいえ、決して一発屋的な模倣品ではない。これは非常に重要なポイントだ。

アウディは以前よりもはるかに多様なモデルを生産している。このずんぐりしたモノリシックなクーペはデザイン上の基軸となり、ハッチバック、セダン、ステーションワゴン、クロスオーバー、グランドツアラー、SUVで構成される現代のラインナップ全体の象徴的存在となる必要がある。

コンセプトCは、過去の要素を取り入れながら新しい方向性を示している。
コンセプトCは、過去の要素を取り入れながら新しい方向性を示している。

つまり、アウディを特徴づけるデザイン要素を、初代TTの時代には存在しなかったモデル群にも適用できる普遍性が不可欠だということだ。

フラセラ氏は「マトリョーシカ人形のようなラインナップ」には難色を示す一方、「見る人に『ああ、これはアウディだ』と感じさせる繋がりが必要」と認めている。

「もちろん、コンセプトCをそのままSUVに変形させるわけにはいきません。それは正しいやり方ではありません」

重要なのは、コンセプトのテーマをさまざまなセグメントやターゲット市場に合わせて適応させることだ。

「アウディらしさ」どう形作る?

「アウディのデザイン戦略の4本柱、すなわち明快さ、技術性、知性、そして感情に立ち返るのです。これらの原則をSUVやセダンに適用すれば、視覚的に繋がりのある表面処理やラインの表現が自然と導き出されます」

アウディはこれまでにも同様のアプローチを取ったことがある。フラセラ氏は初代TTと『A2』を例に挙げ、そのワンボウシルエットとバウハウス風の装飾が明確な共通点だと強調する。「両車はほぼ同じデザイン要素を共有しながらも、キャラクターはまったく異なります」

フラセラ氏のデザインが若者の心を動かし、次の時代の原動力となるかもしれない。
フラセラ氏のデザインが若者の心を動かし、次の時代の原動力となるかもしれない。

例えば、大型の7人乗りSUVが、2人乗りのコンセプトCからどう影響を受けるかについては具体的な言及を避けたが、共通の抑制感覚によってその関係性は明白になるという。

「形状の複雑さを和らげるというこの原則は、すべてのモデルに適用されます。それがクルマ同士を結びつける方法です」

フラセラ氏のビジョンが市販車に反映されるまでにはまだ時間がある。コンセプトCの量産バージョンは早くても来年後半に発売予定だからだ。

しかし、彼は流行に流されない姿勢と不朽の美に強いこだわりを持っている。構想から実現まで長い時間がかかっても、彼のクルマが持つインパクトと外観的魅力が損なわれることはないはずだ。

彼が新しい観客層と新しい時代に向けてデザインしていることは明らかだ。だが何より、近い将来、アウディ販売店に足を踏み入れた若き学生の心を揺さぶり、運命を書き換えるためにデザインしているという印象がある。そうして、また新たな循環が始まるのだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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