ソニー・ホンダEV『アフィーラ』は、なぜ開発中止に至ったのか 北米市場のEV逆風と車内エンタメへの過剰な意識

公開 : 2026.03.27 07:45

ソニー・ホンダモビリティは3月25日、第1弾モデル『アフィーラワン』および第2弾モデルの開発と発売を中止すると発表しました。自動車業界に衝撃が走ったこのニュースから見える背景を、桃田健史が分析します。

直接的な原因は北米市場でのEVに対する逆風

またも、自動車業界に衝撃が走った。『ソニー・ホンダモビリティ』(SHM)は3月25日、第1弾モデル『アフィーラワン』(AFEELA1)および第2弾モデルの開発と発売を中止すると発表したからだ。

これに伴い、米国カリフォルニア州で先行予約していた顧客に対し予約金を全額返金する手続きを開始する。さらに、今後の事業の方向性についてソニー・グループと本田技研工業(以下ホンダ)で協議を続けるとした。

アフィーラワンおよび第2弾モデルの開発と発売は中止に。
アフィーラワンおよび第2弾モデルの開発と発売は中止に。    ソニー・ホンダモビリティ

既に各方面で報道されているが、直接的な原因は北米市場でのEVに対する逆風だ。

アメリカ第2次トランプ政権は昨年1月の発足後、自動車を含む環境対応政策で民主党のバイデン政権やオバマ政権が掲げてきた方向性を180度転換した。

例えば、インフレ抑制法(IRA)によるEV購入時の最大7500ドルの税額控除が昨年9月末で廃止になり、消費者のEV購入意欲が腰折れした。

また、製造者の観点からは、大気浄化法に基づく温室効果ガスの排出規制の根拠とされてきた『温室効果ガスの危険性の認定』が今年2月に撤回された影響が大きい。

これにより、自動車メーカー毎に課せられる全モデルに対する平均燃費規制(CAFE)で大幅な規制緩和となり、自動車メーカーはEV導入の時期を修正する必要が出てきた。

併せて、カリフォルニア州の環境規制として、2035年までに新車販売100%をEV、PHEVなどZEVにすると規定したACC2(アドバンスド・クリーン・カーズ・ツー)が事実上無効化された。

車内エンタメは本当に必要か?

こうした北米市場でのEV逆風によって、デトロイト3(ゼネラルモーターズ、フォード、ステランティス)がEV開発戦略を大幅に見直したことは、日本のアメリカ車ファンにとっても記憶に新しいだろう。

さらに直近では、ホンダが3月12日にオンライン緊急会見を開き、次世代EV『ホンダ・ゼロ・シリーズ』のSUVとサルーン、さらに『アキュラRSX』の開発中止を発表したばかり。その際、記者からソニー・ホンダモビリティへの影響に関する質問があったが、企業としてホンダとは別であるため回答を控えるという姿勢だった。

米国カリフォルニア州で先行予約していた顧客に対し予約金は全額返金する。
米国カリフォルニア州で先行予約していた顧客に対し予約金は全額返金する。    ソニー・ホンダモビリティ

そのため、今回の発表についても『織り込み済み』と見る報道機関もあるが、事の真相はもっと根深いと、筆者は考えている。

キーポイントは、クルマ全体のエンタメ化の必要性だ。

アフィーラにおけるソニーのウリは、車内をエンターテイメント空間にするという発想だ。そこにホンダがSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の技術を融合させるものだった。

確かに、中国市場では若い世代が車内のエンタメ化、IT化を好む傾向があるとはいえ、EV化と自動運転化を強調するあまりに、アフィーラでは車内エンタメの過剰に意識した印象が残る。

ソニーとホンダがタッグを組むことでしか実現しえないモビリティの世界感が、ユーザーのクルマの求める思考と乖離していたのではないだろうか。

SHMは今後、事業を継続するのか、また継続する場合は何をいつまでに実現するのか。事業計画に関する発表を待ちたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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