性能が安定しない「不死鳥」 フェルコム・スペシャル(2) もうすぐ100歳の優雅なレーサー ベースはフォード・モデルA

公開 : 2026.05.24 17:50

いかにも戦前のレーシングカーらしい優雅さ

彼は、排気量を3.3Lから3.6Lへ拡大。2022年にフランスで開かれた、ヴィンテージ・リバイバル・モンレリーへ参戦している。ポルトガル以外で開かれたイベントへ加わったのは、94年に及ぶ同車の歴史で初めてとなった。

ブルーのシャシーへ載るホワイトのボディは、メネレス時代の無骨さとは異なる、優雅さを漂わせる。同時期のブガッティなどへ通じるスタイリングといえるが、低く構えた無駄のない面構成は、いかにも戦前のレーシングカーらしい。

フェルコム・スペシャル(1930年/ワンオフ・レーサー)
フェルコム・スペシャル(1930年/ワンオフ・レーサー)    マヌエル・ポルトガル(Manuel Portugal)

運転席は座面が低く、4スポーク・ステアリングホイールを抱えるように握れる。足もとは広く、ペダルの配置は現代のクルマと同じ。ダッシュボードはアルミ製で、速度と油圧、水温、充電計のメーターが4枚並ぶ。スイッチもいくつか。

ほぼ水平に伸びる3速MTのシフトレバーは、長さが600mmほどはあるだろう。エンジンを始動させると、サイレンサーのないエグゾーストから、4気筒の破裂音が豪快に放たれる。一帯の空気を震わせ、町民の視線を集める。

今も確かな驚きを与えるポルトガル最古のレーサー

ステアリングホイールの向こうには、金属製のディフレクター。正面の視界は、正直良くない。現オーナーのフィリペは、ブレーキの調整が完璧ではないと説明するから、慎重にフェルコムとの距離を詰めていく。

タイヤのキャスター角が強すぎ、ステアリングはかなり過敏。エンジンのトルクは想像以上に太く、アクセルペダルを迂闊に踏むと、3速でもリアタイヤは空転したがる。山間部に広がる町道を、積極的に駆け登れる。

フェルコム・スペシャル(1930年/ワンオフ・レーサー)
フェルコム・スペシャル(1930年/ワンオフ・レーサー)    マヌエル・ポルトガル(Manuel Portugal)

フィリペは、このクルマへ情熱を惜しみなく注いでいる。メカニズムの状態を整えて、2026年のヒルクライム・イベントで、筆者を再び招いてくれるらしい。

2025年のカラムロ・モーターフェスティバルで注目の的になった、ポルトガル最古のレーシングカー。もうすぐ100歳を迎えるマシンが、この土地のモータースポーツ・ファンへ今も確かな驚きを与えていることを知ると、なんとも感慨深い。

協力:ペドロ・フィリペ氏、キャラムロ・モーターフェスティバル
撮影:マヌエル・ポルトガル(Manuel Portugal)

記事に関わった人々

  • サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェルコム・スペシャルの前後関係

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