動的能力の領域拡大 アストン マーティン DB12 S(1) 20ps増しのV8ツインターボ アップル・カープレイ・ウルトラ実装

公開 : 2026.05.28 18:05

スーパーツアラーのDB12へ追加された「S」。V8ツインターボは700psへ上昇し、見た目も差別化。専用シャシーで、よりフラットな姿勢制御にシャープな操縦性を得ています。UK編集部の評価です。

動的能力の領域を拡大した1つ上の仕様

アストン マーティンが推し進める事業プランは、2024年に現CEOのエイドリアン・ホールマーク氏が立案したもの。少ない投資で多くの成果を得るべく、既存モデルの付加価値向上や、ヴィクターやヴァラーなど、超希少モデルの提供が重要視されている。

その方針の中で誕生しているのが、DBX Sやヴァンテージ S、DB12 Sといった、「S」シリーズといえる。同社は1953年のDB3 S以降、しばしばこのアルファベットを用いてきたが、近年ほど広範囲に展開された過去はなかった。

アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)
アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)

2000年代初頭の初代ヴァンキッシュでは、フェイスリフト版としてSが投入されているが、現在は違う。動的能力の領域を拡大した、1つ上のお高い仕様。通常のDB12も、並行して販売は続く。

アストン マーティンの関係者は、ベースグレードの味付けを見直す可能性も示唆している。果たして、Sが得た新たな魅力を探ってみよう。

700psのV8ツインターボに専用シャシー

エンジンは、メルセデスAMG由来の4.0L V8ツインターボで、トルクカーブが調整され、最高出力は20ps増しの700ps。リアアクスル側へ配置される、8速ATも改良を受け、トルクベクタリング機能付きの電子制御リミテッドスリップ・デフも組まれる。

サスペンションは、ビルシュタイン社製DTXアダプティブダンパーが再調整。低速域ではストロークを増やしつつ、高速域では引き締まった姿勢制御を叶え、操縦性を磨いたと主張される。リア側には、高剛性なスタビライザーも得ている。

アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)
アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)

ネガティブキャンバーが強められ、旋回時にはフロントタイヤが従来以上に路面を掴み、敏捷性を向上。リアタイヤの設置性も高められた。ステアリングは、切り始めの精度を磨き、感触を改善したとのこと。ブレーキは、カーボンディスクが標準だ。

ボディ周りでは、フロントスポイラーやサイドスカートが新しく、ボンネットにはルーバーを追加。控えめだが、テールスポイラーも備わる。果たして、車重は38kg軽くなり1820kg。チタン製エグゾーストを組めば、限りなく1800kgへ近づけられる。

アップル・カープレイ「ウルトラ」を実装

インテリアの変更点は、さほど多くない。最大のトピックといえるのは、タッチモニターとメーターモニターを統合する、アップル・カープレイ・ウルトラが実装されたこと。他メーカーに先駆けて、新次元のミラーリング技術を利用できるようになった。

これは、単にスマートフォンとの連携だけでなく、インターネット接続が高度化され、クルマ自体のインターフェイスとしても動作するのが特徴。運転支援システムやエアコンの操作も、カープレイ・ウルトラ上で行える。

アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)
アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)

既にDBXやヴァンキッシュから採用は始まっているが、2026年末には、すべてのアストン マーティンに展開される見込み。グラフィックの独自性は弱まったものの、従来のシステムより遥かに操作しやすいと感じるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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