標準モデルより軽くリニアでスポーツカー寄り アストン マーティン DB12 S(2) 「S」が得た魅力とは?

公開 : 2026.05.28 18:10

スーパーツアラーのDB12へ追加された「S」。V8ツインターボは700psへ上昇し、見た目も差別化。専用シャシーで、よりフラットな姿勢制御にシャープな操縦性を得ています。UK編集部の評価です。

DB12と一線画す高域でのパワーとサウンド

アストン マーティン DB12は傑作、DB9の遺伝子を継ぐモデルとして、戦略的に重要な位置付けにある。新世代のヴァンキッシュヴァンテージに加えて、過激なヴァルハラやヴァルキリー、SUVのDBXなどによって、注目度が薄まっているとはいえ。

だが、この「S」の登場で、そのプレゼンスは改善するだろう。特にエグゾーストのバルブがより開くモードでは、V8エンジン特有の厚みある重低音が奏でられ、アストンらしさへ直に浸れる。もう少し、音質的な豊かさがあってもいいが。

アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)
アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)

電動アシストは一切備わらず、低回転域でのレスポンスは、ライバルより若干マイルドかもしれない。それでも、回転上昇とともに感服の力強さが解き放たれる。ブースト圧は通常のDB12より上昇しているが、ラグの悪化もほぼ感取されない。

最大トルクの増加は限定的でも、高回転域でのパワーとサウンドは、通常のDB12とは一線を画すもの。同社は、このモデルを「スーパーツアラー」と呼ぶのを好むが、一層相応しいクルマになったといえる。

弱まった荒れたアスファルトでの落ち着き

トランスアクスルの8速ATは、変速が滑らかで超高速。プロペラシャフトの回転音を薄く響かせ、稀に振動を生じるが、クラシカルな魅力の1つといえる。

「S」専用チューニングのダンパーは、GTモードで従来の快適性を可能な限り維持したと、技術者は主張する。確かに、しなやかさは大きく違わない。それでも、細かな凹凸の存在感は増しており、荒れたアスファルトでは落ち着きが弱まった。

アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)
アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)

路面の状態が、従来以上に手のひらの感触や乗り心地へ反映される印象。スポーツ・モード時は、その違いが顕著だろう。そのかわり、上昇したステアリング精度とグリップ力、38kgの軽量化が相まって、コーナリングは明らかに機敏になった。

速度上昇とともに感じ取れた、僅かな浮遊感は大幅に軽減。向上したトラクションも貢献し、より高い速度域での自信を生んでいる。立ち上がりの加速が一層頼もしいのは、改良されたリアデフの効果だろう。

よりフラットな姿勢制御にシャープな操縦性

Sが得た20psの差を感じ取れるのは、レブリミット手前の1000rpm前後だけかもしれない。その領域へ到達するには、相当な運転スキルも必要になる。だが、よりフラットな姿勢制御やシャープな操縦性が、DB12の可能性を引き上げている。

他方、大排気量の重量級グランドツアラーであることに変わりはない。燃費は、高速巡航でも9.0km/Lを下回る。峠道を積極的に巡れば、7.0km/Lを割るはず。

アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)
アストンマーティン DB12 S クーペ(欧州仕様)

英国価格は、通常のDB12が19万1000ポンド(約4011万円)からなのに対し、Sは20万5000ポンド(約4305万円)から。オプション追加やカスタマイズが一般的なこのクラスでは控えめな価格差といえ、フェラーリ・アマルフィとほぼ同額でもある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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