フランク・シナトラとライフ誌の表紙へ デュアル・ギア(2) いかにもミッドセンチュリーな内装 後ろ寄りのV8で優れた操縦性

公開 : 2026.07.25 17:50

重量配分に優れ競合を凌駕した操縦性

ゆったりしたシートへ腰を掛ける。発進は軽快で、前方のV8エンジンは静かに回り、2速ATの変速は滑らか。パワーステアリングは想像通り非常に軽いが、路面からの情報がある程度伝わる。フロントタイヤの切れ角が小さく、小回りは効かない。

操縦性は、同時期のアメリカ車を凌駕する。V8エンジンの搭載位置は、技術を共有したダッジより150mmほど後方で、重量配分に優れることが大きな理由。その前方には、ラジエーターへ空気を導く巨大なシュラウドが備わる。

デュアル・ギア(1955〜1958年/北米仕様)
デュアル・ギア(1955〜1958年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

今日はロンドン郊外を走っているが、カサロールの狙い通り、周囲から向けられる視線は半端ない。華やかなラスベガスへの進出も、彼は計画していたとか。ドラムブレーキは12インチと大径。大きなボディを、頼もしく真っ直ぐ止めてくれる。

3年で終了した高級コンバーチブルの提供

1958年半ばに、カサロールが手配したパワートレインなどは在庫が尽きていた。クライスラーが販売不振にあったことや、シャシーの設計変更が控えていたこと、自身の健康問題などが重なり、彼は高級コンバーチブルの提供から身を引くことを決める。

その後、技術者のファラゴはギア社と共同で、ギア L6.4を開発。プロトタイプは1960年のフランス・パリでお披露目されている。これは僅か27台が生産されたが、デュアル・モーターズというブランド名を冠することはなかった。

デュアル・ギア(1955〜1958年/北米仕様)
デュアル・ギア(1955〜1958年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

僅か3年ほどの期間だとしても、ハリウッド・セレブの話題を集めたデュアル・ギア。もし1965年に、リアリティ番組が配信されていたら。SNSが存在していたら。より多くの注目を集め、カサロールの気持ちを繋ぎ止めていたかもしれない。

協力:DDクラシックス社

デュアル・ギア(1955〜1958年/北米仕様)のスペック

英国価格:7646ドル(新車時)/40万ドル(約6400万円)以下(現在)
生産数:117台(予想)
全長:5169mm
全幅:1875mm
全高:1320mm
最高速度:199km/h
0-97km/h加速:8.2秒
燃費:5.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1633kg
パワートレイン:V型8気筒5162cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:233ps/4400rpm
最大トルク:43.6kg-m/2400rpm
ギアボックス:2速オートマティック/後輪駆動

デュアル・ギア(1955〜1958年/北米仕様)
デュアル・ギア(1955〜1958年/北米仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジュリアン・バルメ

    Julian Balme

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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