開発中のEV版『BMW M3』はガソリン版の「天敵」 4モーターと本物の空力デザインで勝負 合成エンジン音は採用せず

公開 : 2026.07.29 07:25

EVでしか実現できない空力設計

スカリー氏は新型M3の設計にあたり、レーシングカーの開発経験を活かした。明確な目的意識を持ったデザインアプローチの一例が、Mコンセプト・ビジョン・ノイエ・クラッセのリアに装備された巨大なディフューザーだ。

スカリー氏の説明によると、これは長年にわたりGT2およびGT3クラスに参戦してきたM3のレーシングカーから着想を得たものだという。レース仕様ではサイドエグゾーストシステムを採用しており、サーキットでダウンフォースを生み出すために必要な、より大型のリアディフューザーを設置するスペースを確保している。

BMW Mコンセプト・ノイエ・クラッセ
BMW Mコンセプト・ノイエ・クラッセ    BMW

このデザインを過去の市販Mモデルに再現することは不可能だっただろう。激しい走行の後にドライバーや乗員が乗り降りする際、脚を火傷してしまう恐れがあるからだ。しかし、エンジンや排気システムが不要になれば、そのような空力パッケージのためのスペースを確保できる。

「わたし達にはそうした(排気の)制約がなくなったので、このチャンスを存分に活かそうと考えています。ディフューザーは、メインセクションと底部のエアロフォイルの2層構造となっています。空力設計において、単独で機能する要素など存在しません。常に互いに影響し合う要素の集合体なのです」

「わたしはダウンフォースを愛しています。運転感覚の観点から言えば、直感では『できない』と感じるようなことを可能にしてくれるからです。クルマがそうやって、ドライバーに『直感的には不可能だ』と思われる体験を実現できるようになったとき、素晴らしい境地に達したと言えると思います」

モータースポーツの伝統を受け継ぐEV

スカリー氏はまた、コンセプトカーのボンネットにある深い通気口についても言及した。これはモーター用のフロントラジエーターを冷却するためのものだが、EVでなければこれほど目立つデザインは実現できなかっただろう。

「通常なら、大きなエンジンが搭載されており、このようなダクトを設けることは不可能ですが、EVではそれが可能です」

BMW Mコンセプト・ノイエ・クラッセ
BMW Mコンセプト・ノイエ・クラッセ    AUTOCAR

ハイビームライトは左右の端のローポジションに配置されている。これは、ル・マン24時間レースに出場したBMWのハイパーカー『MハイブリッドV8』から着想を得たものだ。

一方、イエローのポジションランプは、これまでM3や『M5』のCSモデル、および『M4 CSL』にのみ採用されていたものだ。今回、米国のGTDレースクラスで義務付けられているヘッドランプの色を参考にデザインしている。

Mコンセプト・ノイエ・クラッセはBMWのモータースポーツの伝統を受け継いでいるものの、同社は現在、電動レーシングカーを生産していない。EVのデザインに内燃機関車の要素を取り入れることに矛盾はないのかと問われたスカリー氏は、次のように答えた。

「そのようには考えていません。むしろ、より意味のあるものになると思います」

「このクルマが人々の共感を呼ぶ理由は、BMWがモータースポーツの伝統と継続的な活動を大切にし、それを電動化された未来へとつなげているからだと思います」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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