【現役デザイナーの眼:BYDラッコ】軽自動車の基本形を忠実に踏襲 質感で差別化を図った堅実さ

公開 : 2026.07.30 11:45

市場ごとに最適化しているBYDのデザイン

BYDのデザイン哲学は、『オーシャンエステティック』(海洋美学)です。海の静けさや力強さ、水面に映る光の揺らぎ、水平線の広がりをモチーフにしています。

実際、『ドルフィン』や『ATTO3』では、各所に有機的な曲線が使われていました。特にインテリアは大胆なうねりを取り入れており、人によっては少し情報量が多いと感じるデザインでしょう。

BYDラッコは、質感で差別化を図った非常に堅実なデザインです。
BYDラッコは、質感で差別化を図った非常に堅実なデザインです。    BYD

しかし、『シール』や『シーライオン7』あたりからその表現は控えめになり、日本専用車のラッコではほとんど見られません。市場ごとに最適化しており、非常に戦略的にデザインを展開していることが分かります。

ラッコは、日本で支持されているスーパーハイトワゴン軽自動車の基本形を忠実に踏襲しながら、質感で差別化を図った非常に堅実なデザインです。

何十年にもわたって進化してきた日本の軽自動車は、限られた寸法の中で優れたパッケージを築き上げてきました。その完成形とも言えるレイアウトに、EVという新しい技術が加わることで、新たな時代へと踏み出そうとしています。

ラッコは奇抜さで勝負するのではなく、日本の価値観を深く理解したうえで、新しい選択肢を提示した1台と言えるでしょう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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