水素電気自動車『新型ヒョンデ・ネッソ』を通じて知った理想と現実 世界で最初に市販化し、取り組むのは一気通貫のビジネスプラットフォーム

公開 : 2026.08.14 07:25

ステーションによって大きな金額差がある

今回具体的に充填した水素は3.53kgで、エネオスの場合は1kgあたり2200円なので、支払いは合計7766円となった。ちなみにイワタニは1kg=1650円とのことで、ステーションによって大きな金額差があるのは驚いた。韓国では1kgあたり1000円を切っているそうで、日本とはだいぶ環境の違いがある。

また、『日本水素ステーションネットワーク合同会社』のホームページによると、7月31日現在で日本全国142ヵ所にステーションがあるという。一方の韓国は200ヵ所以上あり、国土の広さが1/4程度であることを考えると、普及率は高いと言える。

システムをイメージする模型。水素のタンクは54Lを3本搭載する。
システムをイメージする模型。水素のタンクは54Lを3本搭載する。    平井大介

ちなみに充填の合間にステーションのスタッフに伺ったところ、1日に充填するのは10台程度。やはり多いのはトヨタクラウンで、市営バスもやってくるそうだ。

横浜から門司港まで1002kmを走破

さて充填した結果、表示された航続距離はエアコンオフで763km、オンで738kmと出た。これは筆者が試乗する前にも複数メディアが街中で使用していたこと、取材日がかなり暑くエアコンを強く入れていたことから、燃費としてはかなり悪い状況であったことは差し引いたほうがいいだろう。

ちなみにヒョンデ・モビリティ・ジャパンのR&Dスタッフが、実際に横浜から門司港まで1002kmを走破し、残りの航続距離はまだ134kmあったという。カタログでは最長1014km(グレードはヴォヤージで、取材車のラウンジは970km)を参考値として掲載しているが、それを上回る数値だ。

100%まで充填した結果、表示された航続距離はエアコンオフで763km、オンで738km(画像は距離以外で一部加工しています)。
100%まで充填した結果、表示された航続距離はエアコンオフで763km、オンで738km(画像は距離以外で一部加工しています)。    平井大介

しかし、こうして取材してみると、日本で普及のハードルが高いことは明らかに感じた。

1000km走るだけなら今のところディーゼルがあるし、EVの航続距離は年々伸びている。急速充電器も、最近は250kWまで対応するものが日本でも見られるようになった。そうなるとやはりパートナーとして迎え入れるには、充填時間の短さを享受するという意味で、生活圏に水素ステーションがあることが大前提となるだろう。

まずはタクシーや公的機関で使用するBtoBが販売の中心となり、今後はBtoCも力を入れていきたいそう。想定される顧客は既に水素燃料車に乗っている方、あるいはこうしたメカニズムに興味がある感度の高い方とされる。

普通に乗りやすいEV

クルマ自体は普通のEVだから、アイオニック5コナなど、他のヒョンデ車と大きく異なる部分はない。両車の長期レポートを担当してきた筆者は、ネッソがその延長にある『普通に乗りやすいEV』であることを実感することができた。

ひとことで書けば、運転していてとにかくストレスが少ないのだ。その裏には、日本のR&Dスタッフが、日本人が乗りやすく感じるように研究し、加速、減速、回生ブレーキなどの制御を調整していることは見逃せない。

自動車としての性能面では、ADASやインターフェイスの進化が感じられた。
自動車としての性能面では、ADASやインターフェイスの進化が感じられた。    平井大介

また、速度ではなく車間を優先の基準としたADAS系や、センターコンソールの切り替え式ボタンなどインターフェイスの進化も確認できたし、バング&オルフセンのオーディオ採用も朗報と言えるだろう。

唯一気になったのは、路面からの入力に対し少し硬さを感じたこと。まだ2000kmも走っていない新車だからか、タイヤがネクセンのスポーツタイヤだったからなのか、いずれにせよ惜しいと感じさせる部分だった。

価格は『ヴォヤージ』が750万円、取材車の『ラウンジ』が820万円、『ラウンジ+』が835万円で、もちろんCEV補助金の適用がある。

もし『アート・オブ・スチール』と呼ばれるヒョンデの新たなデザイン言語を初採用した新型ネッソが気になる方は、水素に対する先入観なしに、まずは実車に触れてみることをお勧めする。もしかすると、クリーンな乗り物を所有するアーリーアダプターとして新しい扉が開くかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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