塩の平原で約653.9km/h 『JCBハイドロマックス』陸上速度記録を樹立(後編) 本番直前にターボに異物混入も

公開 : 2026.08.26 17:10

歴史に名を刻んだ瞬間

バラード氏の仕事の1つは、高精度なデータが記録されたメモリースティックを車両から取り出し、エンジニアに手渡すことだった。そのエンジニアはデータを抱えて、5マイル離れたピットへとディフェンダー・オクタで足早に戻っていった。

「高温については少し心配していました。マシンが熱くなりすぎて、側面の塗装やカーボンが焦げてしまい、2回目の走行を中止せざるを得なくなる寸前でした。残り数分という状況で、無線でエンジンのキャリブレーションを変更するという判断を下さなければなりませんでした」

JCBハイドロマックス
JCBハイドロマックス    JCB

しかし、チームはこうした事態を想定していた。

「直線コースだから簡単だと思われるかもしれませんが、チームは10マイルにわたるソルトフラッツのあちこちに分散しているのです。ロジスティクスの調整には苦労しました」とバラード氏は言う。

折り返し地点でマシンの向きを変え、再びグリーン氏が乗り込む。今回は、バンフォード会長とその家族がコース脇に立ち、ハイドロマックスの走りを見守っていた。掘削機というよりは戦闘機を思わせるエンジンの轟音と共に、マシンが閃光のように通り過ぎた。その姿は確かに速そうに見えた。少なくとも、これまでのどの走行よりも速かった。

そして、実際に速かった。グリーン氏が復路で記録した速度は412.135mph(663.2km/h)だった。任務完了。1年半にわたるチームの奮闘と、1時間にわたる必死の作業は、わずか18秒足らずで報われたのである。

世界最速の水素自動車

ここに世界最速の水素自動車が誕生した。ハイドロマックスは地球上で最速のゼロ・エミッション車だ。

バンフォード会長はこの記録について、特に建設機械において水素が低炭素社会の実現に不可欠であることを証明したと語った。彼の夢は、ザ・ソルトで見事に実現されたのだ。

JCBハイドロマックス
JCBハイドロマックス    JCB

プロジェクトをここまで率いてきたバラード氏は疲労感と安堵を滲ませながら、次のように語った。

「『ようやくやり遂げたぞ』という気持ちが何よりも強いですね。このプロジェクトでは、『一体どうすればいいんだ?』と座り込んで考えることが何度もありました。妻や家族がそばにいて、わたしを支えてくれました」

「わたし達は性能の限界まで挑戦しました。そして、リアから排出されるのがH2Oだけだなんて。素晴らしい。本当に素晴らしい」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

『JCBハイドロマックス』陸上速度記録を樹立の前後関係

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