W型16気筒エンジンのピリオド ブガッティ・ミストラル(1) 1600psの出色ハードへ迫る

公開 : 2025.08.18 19:05

ミストラルで最後を飾るW16エンジン メカニズムは概ねシロンと同じ 内装はクラシカルなエレガントさ 加速以上に印象的な最高峰の音響体験 一般道でしっかり運転を楽しめる UK編集部が試乗

ピリオドが打たれるW型16気筒エンジン

20年間も生産が続いた、ブガッティの8.0L W型16気筒エンジンへピリオドが打たれる。最終モデルとなる、ミストラルで。2005年のブガッティ・ヴェイロンでデビューした屈指の名機へ、相応しい仕上がりだといっていい。

フォルクスワーゲン・グループを率いた、故フェルディナント・ピエヒ氏の半ば強引な舵取りによって、ヴェイロンでは新基準のブガッティが目指された。彼が望んだのはゴルフのように運転しやすく、同等以上の品質と耐久性を備えたスーパーカーだ。

ブガッティ W16ミストラル(欧州仕様)
ブガッティ W16ミストラル(欧州仕様)

ドイツ北部、エーラ・レッシエン・テストコースのストレートで、400km/hの最高速度を発揮できることも要件の1つ。そこで技術者が生み出したのが、W16エンジンだった。

4気筒並んだ構造を4列並べ、4基のターボチャージャーで過給。当時われわれの度肝を抜いた、1001psもの最高出力を叶えていた。その後、更に速いブガッティが代わる代わる登場。シロン・スーパースポーツ 300+では、1600psに達している。

1600psのメカニズムは概ねシロンと同じ

ヴェイロンの登場以降、主に小規模な自動車メーカーが「世界最速」の称号を狙ってきた。1番速い量産車はどれか、という議論は簡単には収まらない。

それでもブガッティは、相当な台数のハイパーカーを、高度な水準で提供している。最速の量産車の1つだという表現へ、疑問の余地はないだろう。

ブガッティ W16ミストラル(欧州仕様)
ブガッティ W16ミストラル(欧州仕様)

W16エンジンの最後を飾るべく、丁寧に生み出されているのが、サーキットが前提のボリードと、素晴らしいサウンドを放ちつつ公道が前提のロードスター、ミストラル。前者は40台、後者は99台の限定となっている。

メカニズムは、概ねシロンと同じ。カーボンファイバー製シャシーの中央に、1600psのエンジンが搭載される四輪駆動。印象的なデザインのボディは、かなりワイドな2シーターで、車重は1977kgがうたわれる。小回りは、ゴルフのようには利かない。

内装はクラシカルなエレガントさ

インテリアは、流れるようなカーブで美しい。空間にはゆとりがあり、細部まで仕上がりに抜かりはない。基本的な骨格を共有するシロンと異なり、ブガッティの象徴といえる、Cのラインがダッシュボードからルーフ側まで繋がる処理は得ていない。

ドアは一般的な前ヒンジで、サイドシルは低く、乗り降りしやすい。調整域の広いステアリングホイールと、ノブが重なったセンターコンソール。タッチモニターは与えられず、クラシカルなエレガントさが漂う。素材もくまなく素晴らしい。

ブガッティ W16ミストラル(欧州仕様)
ブガッティ W16ミストラル(欧州仕様)

シートは身体を優しく包み込み、座り心地に文句なし。操作系も理解しやすい。シフトレバーを傾けてDを選択すれば、発進準備は完了。ペダルはアクセルとブレーキの2枚のみ。運転席からの視界も広い。ステレオは、スマートフォンとの連携で操作できる。

価格は、英国では517万ポンド(約10億2366万円)。仮にこれほどの価値を知らなければ、運転へ萎縮することはないかもしれない。これが同社のやり方だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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