アルピナ創業家の新会社『ボーフェンジーペン』 ブランド売却の経緯と今後の展開 なぜ「Mモデル」ベースなのか?

公開 : 2026.08.27 07:05

揺らいだ5台のダイナモの価値

一方、ツィプセ氏はある種のスター性を持つブランドを必要としていた。BMWロールス・ロイスの間の「隙間」を開拓できるようなブランドだ。この取引成立には18か月を要し、市場の動向に大きく左右された。

ボーフェンジーペン氏は「当初、BMWの取締役会は会社全体の買収を検討していました」と語る。

アルピナB3
アルピナB3

「しかし、M&A担当者は、あらゆるものの電動化が進む中で、5台のダイナモを備えたブッフローエの施設を保有するのは非合理的だと考えました。そこで彼らは、市場権のみを取得するという結論に至ったのです。つまり、アルピナというブランド名、歴史、ホイール、デコレーション、カラーリングといった類のものです」

高級EVの需要が停滞し、環境規制の強化が迫っている今なら、BMWは会社全体を買収する選択をしただろうか。その答えは永遠に分からないが、状況が変わっていることは確かで、あの5台のダイナモメーターも今ではそれほど不要には思えない。

「ディーゼル車への需要は、メーカーの予想を上回っています。例えば、BMWのディーゼル開発拠点であるオーストリアのシュタイアでは、多くのエンジニアをEV分野で育成してきたため、彼らを再びディーゼル分野へ戻すことは望んでいません。だからこそ、わたし達を頼ってきたのです」とボーフェンジーペン氏は説明する。

ボーフェンジーペンの事業展開

こうしたホワイトラベル(リブランディング)は、ボーフェンジーペン・オートモービルの事業の柱の1つであり、25名のエンジニアがBMW向けにパワートレイン、サスペンション、シャシーエレクトロニクスの微調整を行う予定だ。

もう1つの柱はアルピナ・クラシックで、この権利は売却されていない。BMW傘下になる以前のすべてのアルピナ車の修理と部品供給を行うものだ。

ボーフェンジーペン05 GT
ボーフェンジーペン05 GT

ブッフローエ工場はサービスセンターとしても利用され、Z8やV10エンジン搭載のM5といった特殊なモデルに特化するが、地元の人々が2シリーズ・アクティブツアラーを持ち込んでオイル交換やフィルター交換を依頼しても、断られることはない。かつてアルピナは、この小型ミニバンのサスペンションを設計していたのだから。

ワイン事業もある。華やかな倉庫は残される予定だ。そして最後に、新しく登場した非常にパワフルなボーフェンジーペン車がある。

ザガートは「目玉」となるモデルだが、生産の主力は『05 GT』のようなモデルになるだろう。これは5シリーズをベースにパワーと快適性を高めたもので、アルピナよりも控えめな仕上がりとなっている。内装も、通常のBMWの仕様を凌ぐ上質なものだ。しかし、注目すべきは、ベース車がアルピナB5が使用していたようなM550ではなく、正真正銘のM5であるということだ。

ボーフェンジーペン氏は次のように述べている。

「アルピナの時は、(生産ラインにおける)作業統合によりわたし達の好みに合わせて多くの変更を加えることができました。今は、ラインナップの中で最高のクルマを選ぶ必要があります。すべてのクルマがMベースになるわけではなく、一部のニッチ市場ではBMWの主流モデルの方が適している場合もあります。しかし、パワーの面から見て、Mの方へ傾いているのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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