3台の新型マセラティに見たラグジュアリーブランドの矜持(前編)シンプルではなくピュアであること【不定期連載:大谷達也のどこにも書いていない話 #8】

公開 : 2026.08.24 17:05

100年経っても価値のあるデザインを作る

ブッセ自身もタイムレスという価値を大切にするデザイナーである。ある時、彼はこんな話を聞かせてくれた。

「私がピュアなデザインを追い求めているのは、コレクションとして長く愛されるクルマを作ろうとしているからです。決して3年先のことだけを考えてデザインしているわけではありません。10年、20年、ひょっとすると100年経っても価値のあるデザインを作る。それが私たちの目標なのです」

「100年経っても価値のあるデザインを作る。それが私たちの目標なのです」
「100年経っても価値のあるデザインを作る。それが私たちの目標なのです」    マセラティ

ただし、ピュアなデザインを作り出すのは容易なことではない。なにしろ無駄な要素をどんどん削ぎ落としていくのだから、よほど純粋で芯の強いコンセプトがなければ、個性的で美しいデザインは生まれない。

おそらく様々な装飾を施したデザインよりも、ピュアで魅力的な造形を生み出すほうが、何倍も、場合によっては何十倍も時間がかかることだろう。

それは受け手側にとっても同じこと。例えて言えば、ピュアな美しさを見抜く力は、純度の高い水のうまさを敏感に感じ取ることと似ている。つまり、優れた感受性がなければ、その魅力を見つけ出すこともできないのだ。

ブッセが生み出すデザインには、まさにこの『純度の高い水のうまさ』があると思う。それは、作ろうと思って簡単に作れるものではないし、誰にでも簡単に見抜ける種類の美しさではないかもしれない。

それでも、その美しさがわかる人には、病みつきになるほどの魅力がある。純度の低いデザインでは置き換えられない価値がある。私は、ブッセがマセラティで作り出した作品の全てにそうした魅力、そして価値を見いだすことができるのだ。

*3台の新型マセラティに見たラグジュアリーブランドの矜持(後編)に続きます。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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