保たれたのは澄み切った純度 3台の新型マセラティに見たラグジュアリーブランドの矜持(後編)【不定期連載:大谷達也のどこにも書いていない話 #8】

公開 : 2026.08.24 17:10

自分たちの価値をいかに深く理解し、大切に育むか

今回、トリエステでグラントゥーリズモ、グランカブリオとグレカーレに触れて実感したのは、マセラティが自分たちの価値をいかに深く理解し、それを大切に育もうとしているか、ということだった。

デザインは、前述したとおり緻密で注意深いブラッシュアップが施されただけで、澄み切った純度はそのまま保たれた。それはインテリアも同様で、目立った変化といえば、操作性を向上させる目的でシフトセレクターが平面的なデザインから立体的な形状に改められた程度。

緻密で注意深いブラッシュアップが施されただけで、澄み切った純度はそのまま保たれた。
緻密で注意深いブラッシュアップが施されただけで、澄み切った純度はそのまま保たれた。    マセラティ

走りの面でいえば、サスペンションの味付けには基本的に手を加えることなく、エキゾーストノートの音量をほんの少しだけ大きくすると同時に、高回転域まで回した時にはこれまでよりもやや高音域を強調した快音を響かせるようになったくらい。裏を返せば、マセラティの伝統や本質にはいささかの変化も見られなかったのである。

私は、こうした姿勢こそ本物のラグジュアリーブランドに相応しいものだと考える。

顧客の意向やマーケットの動向を注視するのはもちろん重要だ。しかし、目先のセールスを重視して自分たちのポジションまで簡単に見直してしまうようでは、ブランドへの信頼まで揺らぎかねない。ささいなこと、短期的な変化には目をつぶって、自分たちの本分を貫き通す。それこそ、ラグジュアリーブランドに求められる姿勢ではないのか。

その意味において、今回のフェイスリフトは実にマセラティらしく、そしてラグジュアリーブランドに相応しい製品改良だったと思うのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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